ベルギーといえば、ドイツと並んでビール大国であり、種類が多いことでも有名。
1997年のデータによると、ベルギー国内に125の醸造所があり、銘柄数は、OEMや輸出用銘柄等のレーベル・ビールを含めて1053種類、そのうちオリジナル・ビールは780種類におよぶ。スタイル別にみた場合はオリジナル・ビールが1159種類でレーベル・ビールが388種類の合計1547種類である。
ということで、なんとベルギービールだけで1500種類以上あるのである。
もちろん、日本にも沢山の種類のベルギービールが輸入されている。日本のベルギービールバーでは、200種類以上のビールを飲めるところもあるという。
今回は、そんな数多くのビールの中から、私が本気で勧める20種類を紹介していきたいと思う。あくまで個人的主観による選出なので、マイナーとか限定品とかキニシナーイ。
ちなみに、同じ醸造所の商品については、涙をのんで一種類のみの紹介とする。
第15位~第11位
第15位 ギロチン
ギロチン。いきなりおっかないラベルと名前だが、 これはフランスの医者であり断首台の考案者、ギロチン氏にちなんでいる。
ビールはゴールド色で、香りはフルーティー。
しかし騙されてはいけない。これはギロチンなのだ。
最初にコーラやチョコレートのような甘味を感じたと思ったら、すかさず苦味と確かなアルコールを感じることになる。それもそのはず、こいつの度数は9%。
無限の多様性&可能性、ベルギービールの醍醐味なのである。
第14位 リンデマンス ピーチ
以前少し紹介したが、これはリンデマンスシリーズの桃味となっている。
フルーツビールなんて飲んでられないよ!なんて輩がいたとしたら超もったいない。こいつは間違いなくビール好きもうならせるポテンシャルを持ち合わせている。
アルコール度数は2.5%。桃の甘みはもちろんあるが、酸味もかなり効いていて、いわゆる酒らしさがそこにある。チューハイよりも満足感があり、モスカートのスパークリングワインよりも大人な気持ちになることが出来る一品である。
もちろん女性にもお勧めなのだが、個人的には男性にも飲んで唸ってほしいと思う。
第13位 セントセバスチャン グランクリュ
入れ物としては珍しい、陶器のボトルのセントセバスチャンシリーズ。
このビールを作っているのは、ベルギーの都市のひとつ、アントワープの北部にあるスターケンズ醸造所。なんと250年もの長い歴史があり、ひとたび甘い香りに誘われ口に含むと、ほろ甘苦さを感じる。全体的には軽い飲み口で飲みやすい。
最初は、おっ、珍しいなあと思って入れ物を取っておくのだが、なかなか使う機会が思いつかずいつの間にか捨てられているということもある。
第12位 ゴールデンドラーク
これもアルコール度数10.5%という高アルコールビールである。
15位のギロチンもかなりハードなのだが、こちらの方が個人的により重く感じる。
口当たりがかなり重く、口の中でカラメルのような味わいが残る。
こんなに重いと二口目いけないんじゃ?と思う人もいるだろうが、これがいけてしまうんだよなあ。イッツァマジック。ベルギービールマジック。
高アルコールだから敬遠する人もいるだろうが、一度はぜひ試してほしい銘柄である。
第11位 ロシュフォール8
このビールが作られているのは、サン=レミ修道院。
世界に8ヵ所あるトラピスト醸造所の一つで、南部ロシュフォールに位置する。地理的に大衆が立ち入らなかったことと、厳格で評判の修道院長がいたことからトラピストビールの醸造所としてはあまり著名ではなかったというが、今ではビール愛飲家では知らないものはいないほど。
ロシュフォールはこのビールを含み3種類のビールを作っている。
このビールはダークブラウンの色をして、いちじくのような甘い香りとコーヒーのような香ばしい香りが特徴的。とにかく旨味がたっぷりで、この一本だけでかなり満足が得られる。
トラピストビールをいざ飲んでみようと思ったら、ぜひこのビールをお勧めする。
第10位~第6位
第10位 XX(イクスイクス)ビター
その名の通り、非常に苦みの強いベルジャンエール、イクスイクスビター。
世界的にも評価が高いこのビールだが、創業してから10年程度しかたっていないというから驚き。この味わい、やはりというべきか、ホップにこだわりがあり、2種類のホップを砕かずホールのままで使用。 アメリカンIPAを彷彿とさせ、ビール通はそりゃあ好きになっちゃうよね、という味わい。ただ苦いだけでない、というのがポイントだ。日本では、バーでは結構置いてあるけど、小売ではあまり見ない印象。美味しいのになあ。
第9位 ビーケン
ミツバチコスプレのおねーさんが可愛いこのラベル。
フランデレン地方の方言で小さなミツバチという意味のビーケン。
男性が女性を口説くときにも用いられるとかなんとか。
もちろんハチミツも入っている。
瓶内二次発酵をしているため、きめ細やかな泡が心地よい。
ハチミツ入りのビールと言ったら、なんといってもその香りの良さが特徴。
ふんわりと花のような香りを楽しんだ後口に含むと、甘味とピリッとした風味が。
なんとなく、「夫婦で一緒に飲みたい」ビール。
第8位 ヴェデット IPA
ヴェデットといえばホワイトビールが有名だが、数年前に出たこのIPA、侮れない。
なぜならとても美味いからだ。
それまでのヴェデットのビールを飲んだ人なら更にピンとくるが、ヴェデットといえば割と爽やかで軽口。今回のIPAは、IPAならではの苦味と今までの長所がぴったりマッチしているから美味しいのである。
ホップの調合はさすがヴェデット、香りも苦みも一級品だ。
第7位 デュシャス デ ブルゴーニュ
「ブルゴーニュ公国の侯爵夫人」という意味をもつ、デュシャス デ ブルゴーニュ。
おそらくこのラベルを初めて見たたくさんの人が、この人誰?と思うかもしれない。
この人は、ブルゴーニュ公シャルル突進公の娘、マリーさんである。肖像画をラベルにしたというから、たいそう愛でられた女性なのだろうか。
こちらは、ベルギービールらしいビールということでランクイン。味はおそらく万人受けはしないだろう。
18カ月間熟成したビールと、8カ月間熟成したビールをブレンドしており、色はダークブラウン。かなり強烈な酸味を感じさせる香りがあるものの、想像ほどの酸っぱさはなく、甘みを感じることが出来る。
ビールを知ろうと思ったら、一度は飲んでほしい一品。
第6位 シメイ ゴールド
ベルギービールといえばシメイ!というほど有名になったシメイ。
シメイといえば赤・青・白のラベルが有名であるが、このゴールドは数年前から日本で見かけるようになった。
いわくもバッチリで、修道院の開設当初からスクールモン修道院の修道士や、ゲストのみしか口に入れることが出来なかった門外不出のビールなのである。
味もさすがシメイというだけあり、バランスが全体的に取れており、ベルギービールの王道をいった感じの味わい。
もしまだゴールドを試していない人がいれば、かつての門外不出ビール、お試しあれ。
第5位~第1位
第5位 デリリウム ノクトルム
こちらも以前少し紹介したことがあるが、ピンクの象は酔っぱらってみた幻覚の象徴。
デリリウムで一番有名なのは水色ラベルのデリリウム・トレメンス。わざわざ一番有名じゃないのを書いちゃう自分に嫌悪するものの、本当にお勧めしたいから仕方ないのである。ちなみに色々他のビールも出しているのだが、クリスマスバージョンはサンタの帽子を被っていて超かわいい。
肝心のデリリウム・ノクトルムは、デリリウム醸造10周年を記念して造られたビール。複雑な香味と苦味成分が強いからか、濃ゆいビール好きの私は自然とこれを勧めてしまうわけである。
麦芽の苦味と旨味のバランスがよいビール。
ちなみに、デリリウムカフェが都内の数か所にあるのはご存じだろうか。
オシャレカフェとなっているので、デートにもお勧めだ。
第4位 オルヴァル
第11位でロシュフォールを挙げたが、おそらくトラピストビールとして一番日本で有名なのは、このオルヴァルではなかろうか。他の醸造所が数種類のビールを作るのに対し、ここではたった一種類のみ作られている。
ベルギー南部の森林地帯の深くに佇む修道院が日本で有名になるようなビールを作るというのだから、なんだか信じられない。
何年か寝かせてから飲んでも美味しいこのビール、甘み・酸味・苦味がかなり複雑に絡み合っている印象だ。こういうビールは、寝かせるとさらに深みが出て美味しい。私も一つセラーに入れて置いておこうか考えてしまう(しかし途中で欲望に負けて飲んでしまうのを分かっているからなかなか手が出せない)。
ちなみにオルヴァル専用の聖杯型グラスは、同修道院を設計したアンリ・ヴァース氏によるデザインとのこと。
第3位 ヒューガルデンホワイト
これはもうわざわざ特に言うことはないという位有名になったヒューガルデンホワイト。これも以前紹介したが、小麦を使ったホワイトビールで、現在はアサヒが正規輸入元となっている。 以前私が酒売りだった頃も、ケース買いする人が大勢いるほどファンが多かった。ちなみに数年前からロゼも出ており、こちらはフランボワーズの味わいとなっている。
正直、これがランクインしてなければ納得しないっしょ!
第2位 デュベル トリプルホップ
これもまた、なんでわざわざ限定品紹介しちゃうの!っていう人がいたら申し訳ない。この限定品は、正直普通のより群を抜いてうまいと思う。好きすぎて箱買いしちゃう。限定品じゃなかったら1位かもしれない。
ということで、デュベルもベルギービールでは言わずと知れた人気者だが、毎年限定品が出ている。この限定品、普通のものと何が違うのか?
原産地の異なる3種の最高級ホップを使っているのでトリプルホップなのだそう。
もともとスタッフのためだけに造られた試作品だったのが、あまりに美味しかったので、毎年醸造に至ったとのこと。ちなみに毎年異なる配合で製造されているらしい。もう、それを知ってから毎年限定品が出てくるのが楽しみでしょうがない。。。
やはり苦味が特徴的で、これは、醸造工程でステップを分けてホップを加えることで、アクセントの効いた苦みを実現できたそうだ。
これをもし飲んだことがなかったら、絶対に、絶対に買った方がいい。
第1位 サタン レッド
えっ最後にそれ?なんてことを思われる位には著名ではないかもしれない、サタン。
実はこのビール、手っ取り早く美味しく気持ちよく酔いたいときの強力な助っ人なのだ。私が以前働いていた職場の人間がこれを読んだら、
確かにこの瓶よく持ってた!!(帰りに買って飲んでいた)
なんて言われるくらいこのビールが個人的に好きなのである。
元々自家醸造だったのが、あまりの人気に販売されるようになったという。
ハーブとフルーツの風味が鼻を通り、飲むと、カラメルをのせたバニラアイスを食べているような味がする。四口目、五口目と進めたあたりで、すでに気持ちよくなる。
「つい飲みすぎてしまうが、高アルコールなので要注意!」ネーミングの由来通り、私はサタンにやられるわけである。
飲んだくれじゃないよ、ビール好きだよ
ベルギーだけで本当に沢山の種類があるので、どれをお勧めするか迷いに迷ったし、泣く泣く紹介したいものを削ったりもしたので、それはまた別の機会に紹介したい。
ベルギービールは変化に富んでいて、色々なビールがある分、かなり私個人の好みが出ているランキングになっていると思う。しかし、どれか気になるものがもしあったとすれば、ぜひ一度試してみてほしい。