皆さんは、料理がテーマの映画を観ることはあるだろうか。
日本ではあまりそういった映画は撮られないようだが、個人的に料理が出てくる映画が大好きだ。
主人公は料理人。忙しそうな調理場、調理の音、特にジュワーっという焼き音。美味しそうな盛り付けのシーン。それだけでも心が躍って楽しいのだが、勿論映画にはそれぞれのエピソードがある。
今回は、色々なエピソードが楽しめる映画を3つ紹介させていただきたいと思う。ちなみに、多少ネタバレがあるので、苦手な人は注意ということで、ひとつよろしく。
サンドイッチが強烈に食べたくなる「シェフ3ッ星フードトラック始めました」
最初にご紹介するのは、「シェフ3つ星フードトラック始めました」。
主人公は元一流レストラン料理人カール・キャスパー。レストランのオーナーに、同じメニューを作りつづけることを強いられ、衝突。辞めることに。
失意のまま元妻に連れられて行ったマイアミのカフェで、とても美味しいキューバサンドイッチと出会い、元妻や友人、息子らとフードトラックでサンドイッチの移動販売を始めた。そして、フードトラックを続けていく中、SNSで人気爆発し、成功を収めるというストーリーだ。
映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』 予告編 2015年2月28日(土)公開
ストーリー自体はありがちなのだが、料理シーンは指導を受けているだけあって、とてもこだわりを感じ、音楽もラテンミュージックで映画ととても合っている。
また、息子と一緒にフードトラックを成功させていくのだが、おんぼろトラックを嫌々洗っていた息子が、プロの料理人は料理に妥協しないとたしなめられるシーンなんかは、親子の絆と息子の成長を感じたりだとか……
今時だなあと思ったのは、主人公がSNSで評判を落としたり、逆に息子がSNSで宣伝することで成功を収めるというのと、さらに、主人公のファンだったブロガーの存在。お店に行ったら料理にがっかり。でも、もしかしたら次は……!と、サンドイッチを食べて感動するシーンも見どころである。
個人的に、コーンスターチをある部分にまぶすシーンが、そんなに爽快感があるものなのか気になったが、私自身は検証できないので、誰かに検証してみてほしいなあと思った。
この映画を観ればわかるが、気づいたらあなたもサンドイッチを買いに行っているはずである。
めっちゃ美味しそう。
ラブロマンスをそえて「幸せのレシピ」
お次は「幸せのレシピ」。
マンハッタンの高級レストランで料理長を務める頑固で完璧主義者の主人公の女性・ケイトは、姉を交通事故で失い、残された姪を引き取ることに。一方仕事場に、彼女と正反対の陽気な性格の副料理長ニックが雇われた。
完璧主義な主人公に馴染めず料理を食べてくれない姪と、今までと異なるやり方で調理場に馴染むニック。
最初はそんな環境に辛さを覚えるケイトだが、ニックに心を開き、彼の食事を食べるようになる姪の姿を見て、ケイトの意識も次第に変化をしていく……(ラブロマンス的な意味で)
こちらも、ラブロマンスのベタベタなベタ展開なのだが、美味しい料理片手にワインを飲みたくなるような、そんな映画である。
姪との関係に悩むケイトと、姪の子供らしい純粋な気持ち。ぎこちない二人から、次第に関係が良くなっていく過程が、リアルでよい。
また、ライバルだったニックを認めたことで、急速に進む二人の仲は、いかにもラブロマンスらしい。ニックもナイスガイで、見終わった後も温かい気持ちになれる映画だった。
食器も美しい「大統領の料理人」
最後は、「大統領の料理人」。
フランス片田舎で小さなレストランを営んでいた主人公ラボリは、突然、ミッテラン大統領の専属料理人に選ばれることに。
大統領官邸で初めての女性料理人として、周囲に嫉妬されながらも、給仕長のジャン=マルクや、助手のニコラらの協力を得ながら、素朴な料理を愛する大統領に信頼されるシェフに。
だが、医者や経理から、大統領の健康管理や経費削減について責められ、自由に料理を作れなくなったことで、疲弊しきってしまい、結局専属料理人を辞職することになった。
その後、彼女は南極のフランス観測基地で料理人となって、任期を無事に終えるというストーリーだ。
映画では南極の任期満了の最終日と、専属料理人としての2年間が交互に描かる進行で、少しわかりにくいという前評判だったが、個人的にはあまり気にならず観ることができた。
また、今回紹介した映画の中で一番色々な料理が出てきて、レシピを言いながら作るのが、これまた良い。さらに大統領に出す料理だけあって、食器の美しさが際立つ。料理のシーンでは一番楽しむことが出来た。
ただ、決してこれは単純なハッピーエンドの話ではない。チャーミングながら料理に厳しい主人公が、周囲の男性たちのおどろおどろしい嫉妬や、税金から出る材料の費用や健康のために使える食材が厳しく制限されることで、本当に大統領に喜んでもらえる料理を作れないと、疲弊しきってしまい、結局専属料理人は降りてしまった。
大統領自身が料理本が大好きで、レシピをそらで言えるほど好きなのにも関わらず、喜んでもらえる料理は出せない。そんな辛い思いが伝わってきつつも、後に就いた南極での給食づくりの仕事では、限られた食材で大勢を満足させ、食で人を幸せにしたことが、彼女自身の再生を思わせる。
爽やかな終わりではないが、人としての何かを思わせる、そんなストーリーだった。
料理映画の面白さ
ということで、今回は3つほど、料理人が主役の映画をご紹介させていただいたが、料理が好きな人にとっては、それだけで料理映画というのは面白いのではないかと個人的には思っている。どれもあまり料理シーンに手を抜いている印象はなく、逆にちゃんとこだわっている気がする。とにかくどれも美味しそうで、食事がしたくなるものばかりだ。
また、ストーリーについては、ほとんどベタはベタで、先が読める展開なのだが、意外にも話の内容が被っているものはなく、それぞれに楽しむことが出来た。
普段はあまり料理映画を観ない方も、これを機会に、楽しんでみるのはいかがだろうか。