(写真引用:https://www.millesimes.co.jp/wineinfo/wineinfo-350/)
皆様はブルゴーニュワインはお好きだろうか。
古くから高級ワインの名産地として名高いフランス・ブルゴーニュ地域であるが、その中でも優れた作り手のひしめくシャサーニュ・モンラッシェに、一際注目されているドメーヌがある。
その歴史は19世紀、オーギュスト・モローにたどりつく。ベルナールが1960年代に相続し、基礎を築いた。2000年からは息子である4代目のアレクサンドルとブノワ兄弟がドメーヌを運営している。アレクサンドルは栽培、ブノワは醸造を担当し、うなぎ昇りにに評価を得ている。
モローの白ワインは豊かなミネラル感を感じ、キレがあるのが特徴で、特に村名ワインであるシャサーニュ・モンラッシェは非常にコストパフォーマンスに優れた逸品。また赤ワインも、穏やかな抽出でフィネスが際立つエレガントな味わいで極めて上質である。
今回はそんなシャサーニュ・モンラッシェのトップクラス、ベルナール・モローについて書いていきたいと思う。
著名人による評価
(写真引用:https://www.millesimes.co.jp/wineinfo/wineinfo-350/)
名高い作り手が多いシャサーニュ・モンラッシェの中で、しっかりと評価を積み上げているドメーヌ・ベルナール・モロー・エ・フィス。
その中でも著名どころの評論家たちの言葉を少し紹介しよう。
まず、「パーカーポイント」という評価基軸を作ったロバート・ パーカー氏が創刊したことで有名なワイン・アドヴォケイト誌のブルゴーニュ担当ニール・マーティンは、2014年2月号にて「シャサーニュ・モンラッシェには、非常に多くのモロー家の分家があるが、ベルナール・モローは最高の1つ。今後の行方に期待して欲しい。ここのワインはトップクラスだ」と評している。
また、ブルゴーニュの権威、マスター・オブ・ワインでありブルゴーニュに精通した評論家として名高いクライブ・コーツ氏も「過去10年で品質が向上した。非常に良いワインだ」との評価を得ている。
このように、年々評価の上がっている、期待大のドメーヌであることは言うまでもない。
リュットレゾネ(減農薬栽培)と人為的介入を排した醸造スタンス
(写真引用:https://www.millesimes.co.jp/wineinfo/wineinfo-350/)
このドメーヌは、剪定することによって収穫量を落とし、減農薬栽培(リュット・レゾネ)を行っている。厳しく選果を行った後に、空気圧式圧搾機を用いて、自然酵母だけで発酵されている。
ラッキング(滓引きをして固形物を取り除くこと)もバトナージュ(熟成中のワインをかき混ぜて滓を出すこと)もできる限り行わない。そうして出来上がったワインは濃厚さとエレガンスさを備えたアペラシオンの見本。このドメーヌの知名度は、実力に比べて低すぎるといっても過言ではない。
赤ワインも白ワインも優れていると評判だが、白ワインでトップを行くのは、1樽のみのバタール・モンラッシェを除けば、シャサーニュ・モンラッシェ・プルミエ・クリュのモルジョ。切れが良く、柑橘系、アプリコットの香りときれいなミネラル感に縁取られている。村名のシャサーニュ・モンラッシェはお買い得の見本だ。赤ワインも、ほかの生産者のシャサーニュ・モンラッシェの青さや野暮ったさとは無縁。穏やかな抽出で、上品に仕上げている。
シャサーニュ・モンラッシェ・プルミエ・クリュ・モルジョ
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洋梨や桃、白い花、ミント、ペトロール香が徐々にほどけてゆき、フルボディの滑らかで緻密な味わいを持っている逸品。2018年の作品はパーカーポイント 92-94 点の高評価を得ている逸品。
シャサーニュ・モンラッシェ
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実に可憐なワインであり、温かいパンやシトラスオイル、フレッシュな桃や白いドライフラワーのアロマが次第に露わになっていく。フルボディながら、サテンのように滑らかな舌触りと心地よい凝縮感を持ち、くっきりとしたキレの良い後味が広がっていく。
数々の評価誌による近年のワイン評価
(写真引用:https://www.millesimes.co.jp/wineinfo/wineinfo-350/)
このドメーヌのワインは、パーカーポイントだけでなく バーグハウンド、ジャンシス・ロビンソン等の評価も高い。
ちなみにバーグハウンドというのは、ロバート・パーカー氏とならび影響力のあるワイン評論家の一人であるアラン・メドウズが出版する評価本で、ブルゴーニュを中心にピノの評価としての権威とされている。
またジャンシス・ロビンソンは、ワイン製造業者や販売業者以外で始めてマスター・オブ・ワインの称号を与えられたジャーナリストの女性で、2010年に訪日した際は甲州ワインに関する講演会を行った人物。数々の名著があるが、1994年刊行の『Companion to Wine』と2012年刊行の『Wine Grapes: A Complete Guide to 1,368 Vine Varieties, including their Origins and Flavours』はワイン関連書籍の中でも特に画期的な名著とされている。
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そんな彼らもこのドメーヌの様々なワインに高得点をつけているのである。
最後に、2018ヴィンテージに関してワインアドヴォケート 2020/1/10 に掲載された記事を紹介する。
この年の温暖な気候を考慮し、収穫に後れをとることを懸念したアレックスとブノワ・モロー兄弟は、2018 年 8 月 30 日に収穫を開始し、ワインのアルコール度数は 12.15~13.3%に収まったと報告している。
2018 年は、モローにしては収穫量の多い年で、プルミエ・クリュや古樹の畑も例外ではなかった。モローの代表的な 1 級畑シュヌヴォットですら 1ha あたり 62hl もの収穫量が得られ、ここ 20 年で最も豊作となった。白ワインの殆どは、2019 年 1 月に発酵を開始し、同年 7 月まで続いた。
モローのワインを最高の状態で味わうため、この年もブルゴーニュのドメーヌを巡る旅の最後にドメーヌ・モローを訪れた。2018 年は、若々しくも実に見事な味わいを呈し、2017 年よりも早く飲み頃を迎える早咲きのヴィンテージだが、美しくバランスがとれている。シャサーニュ・モンラッシェで最も興味深いテロワールをいくつか回ろうと考えるならば、モロー以上に良質な生産者は思い浮かばない。14 ヘクタールの畑を有するこのワイナリーの成功の礎となったものは一体何なのだろうか。昨年も述べた通り、ドメーヌ・モローは 2 人の兄弟の間で大まかに仕事分担が決められており、ブノワがブドウ栽培を担当する一方、アレックスがセラーでの仕事を担っている。ブドウ畑では、殺虫剤は一切使わず、有機肥料のみを使用している。セラーでは、発酵期間とシュールリー熟成の期間を長めにとり、バトナージュはしないのがアレックス・モロー流で、熟成の仕上げをステンレスタンクで行い、この際に軽く清澄処理を施すことが多い。新樽は、その殆どをフランソワ・フレール社より仕入れ、選定は慎重に行っている。場所により個性の違いが引き立つ美しくバランスのとれたモローの白ワインは、今日生産されているブルゴーニュの白ワインの中でも最高峰にある感動的な味わいであり、この年のワインも心から読者にお勧めしたい逸品揃いだ。
毎年質とともに評価が上がる、まさに新進気鋭のドメーヌ。
ベルナール・モローについて少しでも興味が湧いたのなら、ぜひ迷わず購入してみることをお勧めする。