皆さんは日本酒は好きだろうか。何を隠そう私は大好きで、出汁と合わせるならやはり日本酒が非常に合うことも魅力であるし、価格を考えても、日本酒は愛さずにはいられないお酒だ。
そんな私は秋に神戸方面へ旅行した際、福寿を作る神戸酒心館のレストランで幸せな食体験をしてしまった……。ということで、この記事ではその感動を余すところなく伝えていきたい。
福寿とは?神戸酒心館の想いを受け継ぐ日本酒
「福寿」というブランドの日本酒を作っているのは神戸酒心館という酒蔵さん。この会社は、宝暦元年(1751年)に創業した、なんと270年以上もの歴史を誇っている。「福寿」は、それから13代にわたり守り続けられており、酒造りへの強いこだわりと、伝統を未来へ繋ぐ志が強く感じられる。
「福寿」ブランドが目指すものとは
「福寿」は、ただ美味しい酒を作るということ以上に、酒に凜とした骨格をもたせ、芳醇な味わいにすることで、飲む人の心をふくよかにし、人生の小さな幸せを彩る時間を紡ぐことを目指している。
六甲山の恵みと伝統技術を活かして造られた福寿は、特別な祝いの日だけでなく、日常の中でちょっと良いことがあった日、大切な人と過ごす時間、少し贅沢な食事を楽しむひとときにも味わってほしいという願いが込められて造られているのだ。
持続可能な酒造りへの挑戦
神戸酒心館では、サステナブルな取り組みを積極的に推進している。2030年までには以下の目標を掲げていて、地球環境と調和した酒造りの模範となるべく動いているのである。
- 日本酒製造におけるCO2排出ネット・ゼロの達成
- 再生可能エネルギー100%の使用
- 水使用量の削減や持続可能な農法の支援
- 六甲山の環境保全活動
そんな神戸酒心館の環境や持続可能性への貢献はまわりにも評価され、多数の賞を受賞している。
- ひょうご産業SDGs認証事業「ゴールドステージ」認証(2023年)
- ザ・リニューアブル・エナジー・アワード受賞(2022年)
- ウォーター・マネジメント・アワード受賞(2020年)
- エコプロアワード財務大臣賞(2019年)
これらの受賞歴は、神戸酒心館の高い環境意識と品質の証といえるだろう。
福寿の味わいを堪能できる神戸酒心館のレストラン
神戸酒心館が運営するレストランの名は、「蔵の料亭 さかばやし」。
「福寿」を中心とした酒と料理のペアリングを楽しむことができるお店で、地元の食材を活かした料理とともに、「福寿」の深い味わいを堪能できる空間とも言えるだろう。
こちらが待合。右手に見えるブルーのライトが非常に美しく、お猪口をさかさまにしたような形で印象的だった。
さて、席に着くと、何やら会席料理があるという。しかもよく見てみると、季節のミニ会席なるものがなんと4,000円という安価な価格で楽しめるというではないか……。
他の会席料理と比べても、そんなに見劣りするような内容でもなかったため、ものは試しと頼んでみることにした。
そして飲み物のメニューを見ていると、本当に色々なラインナップがあり、いい意味で迷ってしまった。
早速利き酒セットを発見。これは食中にオーダーすることにして……。
最初は純米にごり生酒を頼むことにした。
酒の旨味を感じつつも、食前酒らしくほどよい発泡が心地よい。そして滑らかでさわやかな味わいが素晴らしい。一杯目として、我ながら最高のものを頼んでしまった。
そうしてまず最初にやってきたのが、先付の神戸産イチジクの白衣掛け。栗の麩やサツマイモ、枝豆にクルミと、秋の味覚たっぷりのメニューだ。
一口食すと、薄切りのイチジクの甘味がほんのり感じられ、さらに栗やサツマイモなどの季節の食材が私の舌をするるんと駆け抜けていった。
なるほどこれは掴みバッチリ。まさに先付としてピッタリの味わいだ。
そして次に登場したのは清汁仕立て海老飛龍頭。品の良いおすましの風味を楽しみつつ、海老の旨味をじっくりと味わう。身体も温まり、私のお腹はまさに準備万端である。
ここでまたも神戸産イチジクが登場。神戸ではイチジクは国内でも有数の生産量を誇っている一方、ほとんどが市内で消費されているという。確かに、神戸のパティスリーや他の飲食店に立ち寄った際も、イチジクを使った様々なメニューが並んでいた。それがまた何とも美味しく、生のイチジクの味わいを堪能させてもらえるのである。
こちらは神戸産イチジクと鯛の昆布締めだ。日本酒を煎ったジュレが掛けられており、これがさらに料理と日本酒の懸け橋となっている。やはり出汁には日本酒が本当によく合うし、イチジクのほんのりした甘さがこの料理の良さをさらに引き出している。
そうして一杯目もなくなったので、飲み比べを頼ませていただいた。
生酒の利き酒セットが1,680円、純米酒の利き酒セットが1,500円。どれも50mlでの提供となる。およそ3,000円余りでこんなに美味しい日本酒が6種類も楽しめるなんて、なんて幸せなのだろう……。
ちなみにこのテーブルは、震災の時に倒壊してしまった蔵の一部に使われていた赤松の部材を再利用しているものだという。なんと味があるテーブルなのだろうか。
ここで野菜の炊き合わせがやってきた。秋ナスにカボチャ、小芋、パプリカ、ほうれん草、針生姜。生姜と出汁が利いた最高の煮物だった。
さらに、こちらはなめ茸がたっぷりと入った餡かけのすくい豆腐。出汁・野菜・豆腐という、主張しない味わいの食材の旨味を引き出すような日本酒の技には本当におみそれしましたというほかない……。
飲み比べのお酒を飲み終わったところで、樽熟成された福寿を頼んでみることに。面白いことに、樽でワインを作った時のような特徴的な味わいがこの日本酒でも存分に感じられた。これは是非日本酒好きには飲んでほしい……!
そうしてやってきたのは、但馬の棚田米のコシヒカリと自家製キノコの佃煮、香の物と赤出汁。米を存分に楽しむことが出来て、赤出汁を飲むころには思わずほうっと息をついた。
特にキノコの佃煮は、予想通り旨味たっぷりの最高の味。私は佃煮には目がないので、迷うことなくお土産に買っていくことにした。
そして、写真を撮るのを忘れてしまったが、最後はフルーツが出てコースは終了。これだけだとお腹が空いているのでは?と思う方もいるかもしれないが、これが不思議とお腹は満たされているのである。さすが酒蔵の運営するレストランだけあり、本当に料理と酒の相性がよく、良い意味でずっと驚きっぱなしだった。
お酒も8種類楽しむことが出来たのに、一人10,000円もしないなんて……。倍額出しても良いと思えるような取り合わせで、個人的に再訪必至の満足度である。
ちなみに、神戸酒心館はレストランのほかにショップもあるので、このレストランで特に好きだった日本酒をお土産に買うことも出来るし、ショップでも飲み比べすることが出来る。
「福寿」で心豊かな時間をぜひ体験してみて
もともと「福寿」の味が好きだった私だが、このレストランでの食事をして、更なるファンになってしまった。皆さんも、是非一度その味わいを試してみてはいかがだろうか。