イタリアン好きなら一度は訪れてほしい、「リストランテ シンティッラ」。名店で腕を磨いたシェフが手掛ける料理は、伝統を大切にしながらも、現代的なエッセンスを加えた唯一無二の一皿。さらに、厳選された旬の食材やこだわりのワインペアリングが、このお店での食事を特別なものにしてくれる。
食べログ百名店にも選ばれたこの隠れ家的名店で、心に残るイタリアンを味わってきた私。今回はコース料理の詳細やワインとのペアリング体験を、たっぷりとご紹介していこうと思う。
- リストランテ シンティッラの店舗情報
- シェフの理念とワインペアリングの評判
- コース料理
- コースの金額について
- まとめ
リストランテ シンティッラの店舗情報
東京メトロ日比谷線中目黒駅から徒歩7分ほど歩いた先の右手側にあるイタリアン。このお店にはじめてくる方には特に注意していただきたいのだが、1Fは別のお店で、その先の階段を下りる必要がある。
完全予約制となっており、こちらから予約可能。
住所:〒153-0061 東京都目黒区上目黒2-44-9 クレストモアB1
TEL:03-6452-4395
営業時間:
- ランチ:11:30~15:00(L.O. 12:30)
- ディナー:17:30~23:00(L.O. 20:00)
定休日:無し
支払い方法:クレジットカード(VISA、Master、JCB、AMEX、Diners)、電子マネー(交通系電子マネー(Suicaなど)、楽天Edy、iD、QUICPay)、QRコード決済(PayPay、d払い、楽天ペイ、au PAY)支払可
席数:ダイニング5卓12席、完全個室1卓6席
店員さんに誘導されて、階段を下りていくと……。
お店前には名刺とお酒の数々が置かれている。2023年度の食べログ イタリアンの東京都の百名店にも選ばれているそうだ。
シェフの理念とワインペアリングの評判
ristorante scintilla(リストランテ・シンティッラ)の総料理長を務めるのは、名店で研鑽を積んだ武笠裕一氏。武笠氏が腕を振るった「サバティーニ」「ダノイ」「表参道フェリチタ」は、どれもイタリアンシーンを彩る名店。クラシックやモダン、様々なスタイルで食材の魅力を引き出してきたという。
そんな彼が経験を経て掲げるのは、「イタリア料理であること」という一貫した理念。伝統に忠実でありながら、新たなエッセンスを加えることで、料理は唯一無二の存在へと昇華されるという。
シェフ自らが日本全国の生産地へ足を運び、選び抜いた旬の食材。それらを贅沢に使用し、モダンな盛り付けと華やかな表現で届ける一皿は、まるでアートのように美しく、味わいは心に深く残ると評判だ。
さらに、料理とペアリングされるイタリアンナチュラルワインが料理をより一層引き立てると好評なので、食事の前からワクワクが止まらなかった。
コース料理
1品目:ポレンタ じゃがいも 毛蟹
コース料理のはじまりはジャガイモと毛蟹のポレンタ。ポレンタとは、トウモロコシの粉を煮込んで作る、イタリアの伝統的な料理のこと。そんな素朴な料理が、タイムの泡(エスプーマ)とともに登場。
おお、あわあわしている……。
お皿が運ばれてきた瞬間、タイムのふんわりとした香りが食欲をそそる。この泡をそっと掬ってみると、クリーミーなポレンタが顔をのぞかせた。
ひと口食べると、濃厚な毛ガニの旨味がポレンタ全体に溶け込み、贅沢な味わいが口の中に広がっていく。その中にはころっとしたジャガイモが隠れており、クリーミーな食感に心地よいアクセントが加わるのが面白い。
そして最後にタイムの香りが鼻を抜け、爽やかさを添えてくれる。他では食べたことのない味だ。
乾杯酒:シャンパーニュ
まず一杯目はペアリングと別にシャンパーニュをオーダーすることに。寒くなってきたので、キレよりは少しコクのある味わいが心地よい。
ちなみにグラスはWINEXのHTTグラスシリーズ。このシリーズは、熟練のクラフトマンが創るハンドメイドグラスだ。
最高級のグラスで有名なブランド「ロブマイヤ―」の素材と同じく鉛を使わないカリ・クリスタルを採用し、軽くて薄いグラスながら、洗浄機でも洗うことのできる丈夫さが好評。
実際にこのグラスで飲んだのは初めてだが、なかなかに使いやすい。後で価格を調べたが、同じクオリティなら、それこそロブマイヤーなら倍はしそうな値段なくらい安くて驚いた。
2品目:チーズフォンデュのクロケッティーナ 鹿の燻製生ハム"スペック"を添えて
「クロケッティーナ」とは、イタリアの一口サイズのクロケット(コロッケ)のこと。外はカリッと香ばしく揚がっており一口かじるとふわっとチーズの風味が。上からもチーズがかけられている。
その上に添えられたのは鹿の燻製生ハム「スペック」。スペックというのは山岳地方の伝統的な保存食で、程よい塩気とスモーキーな香りが特徴だ。チーズのまろやかなコクに、スペックの香りと旨みが重なることで、奥行きのある味わいに。
クロケッティーナの熱々でクリーミーな食感と、鹿肉のしっとりとした食感とのコントラストが楽しく、あっという間に食べ終わってしまった。
3品目:牡丹海老 オシェトラキャビア 紫蘇の香り
次は海老の上にキャビアや紫蘇がちりばめられた、美しい一皿。
まず目を引くのは、透明感のある牡丹海老の美しさ。甘みが強く、ねっとりとした食感の牡丹海老が、見た目からも新鮮さを物語っている。中央に添えられたオシェトラキャビアには上品な塩気と旨みがあり、海老の甘さを一層引き立てていて、全体に散りばめられた紫蘇もほどよく香る。
口に運ぶと、海老の甘さやキャビアのコク、紫蘇の爽やかな香りが重なり合い、計算された味の調和が広がっていく。一つ一つの素材がきちんと主張されつつも、全体として完成されたバランスの良さが素晴らしい。
見た目の美しさと素材の魅力が際立ち、まさにモダンな一皿だった。今思い出しただけでもよだれが出てきてしまうほど美味しかった。
ペアリング1杯目:ジェット(イタリア/トスカーナ)
ということで、ここからペアリングの始まりだ。1杯目はイタリア・トスカーナのロゼワインで、品種はサンジョベーゼ。辛口に作られてはいるものの、温度をあえて高めのままサーブしてくれていたので、若干甘味も感じた。
エビのねっとり感や甘味や旨味をしっかり受け止めてくれて、かなり好きな組み合わせだった。
4品目:猪と茄子のグラディナート
次は野性味のある猪肉と茄子を合わせた一品だ。写真では分かりにくいかもしれないが、猪肉と茄子がミルフィーユ状になっており、お肉自体は量は少ないがゴロッと入っているのできちんとした噛み応えもある。そのため、味もそうだが食感にもとても面白みを感じる。
グリルされたことによる香ばしさやパン粉のさっくり食感もありながら、茄子のとろりとした柔らかい質感も良い。お肉は猪肉らしく、しっかりとした旨味と野生味を残しつつも、上品に仕上げられていて、猪肉特有の風味が茄子の甘みと合わさることで、深い味わいが広がっている。
食べ進めるたびに、猪肉の旨味、茄子のとろける甘さ、ソースの爽やかさ、そしてチーズの塩味が交錯し、絶妙なバランスを生み出していて、シンプルながらも手間を感じさせる一品だった。
ペアリング2杯目:ガヴィ(イタリア/ピエモンテ)
茄子と猪肉に合わせる2杯目はイタリア・ピエモンテの白ワインで、品種はコルテーゼから作られている。樽を用いて発酵されているからか、樽感が少しありつつも不思議なハーブのような風味を感じた。
まさか猪肉に白ワインを提案されると思っていなかったのだが、飲んで納得、これは面白い。料理には肉自体の量が少なく、しっかりした旨味などの猪肉の良い部分だけを茄子が良い感じに吸収していて美味しく感じたのだが、ここで爽やかながらも少し熟成感のある白ワインを含むことで、さらに綺麗に味をまとめ上げている。この時点で、ここのソムリエさんのセンスにすでに感服していた。
5品目:米澤豚とンドゥイヤのタリオリーニ
まず、タリオリーニは細めの手打ちパスタで、卵を使った滑らかな食感が特徴だ。ソースとの絡みが良く、繊細ながらもしっかりとした食感が楽しめる。
この一皿の主役の米澤豚はしっとりと柔らかく、甘みのある脂が魅力的。旨味が凝縮された米澤豚の肉が細かなソースとなり、タリオリーニにしっかりと絡んでいるのが最高に美味しい。
ンドゥイヤとは豚肉に唐辛子を練り込んだ、スパイシーでややクセのあるソフトサラミで、イタリア・カラブリア州の伝統食材。これが全体に深みのある辛味と香りを感じさせてくれていて、食べる手が止められない。米澤豚の甘みとンドゥイヤのピリッとした風味が絶妙なバランスになっている。
ここにふんわり細かく削られたチーズがあることでわずかなコクが足され、かつ香味のあるパクチーが食べた後の爽やかさに一役買っている。
ここまでのお皿全てバランスがとても良く、非常に考えられている印象。一言で言うと面白い。
ペアリング3杯目:ランブルスコ クアレシモ(イタリア/エミリアロマーニャ)
先に言っておくと、今回の食事の中で一番面白かったペアリングがこちらのランブルスコだ。
ランブルスコというと、辛口もしくは甘口の赤スパークリングワインで、赤ならではの果実味を感じさせつつ泡でさっぱりさせてくれる、安価なワインという印象なのだが、これはワイン単体でも美味しいと感じられる一品。
タンニンからくる濃厚さがありつつ、ランブルスコならではの引き際の良さを感じる。タリオリーニの脂とワインの濃厚さが上手に溶け込み、ソースの辛味をきちんと感じながら最後はすっきりとまとまっている。
まさかランブルスコが!と思わせてくれる、楽しい取り合わせだった。
6品目:香りを包み込んだラヴィオリ"トルテッリーニ"
手のひらに収まる小さな包み形が特徴のトルテッリーニは、イタリア・エミリア=ロマーニャ州発祥の伝統的なパスタのことを言う。
「香りを包み込んだ」との言葉通り、これは皿が運ばれてきたときからかぐわしい香りをしていたが、食べた時が一番の驚きだろう。しっとり滑らかで程よい厚みのパスタ生地がソースを含んで、口の中で旨味と香りを同時に味わわせてくれる。
仕上げに薄く散らされたトリュフは、ふわりと舞い降りた雪のようにパスタの上に添えられ、その香りが食欲をそそる。
噛むたびにトルテッリーニの中から広がる滋味深い出汁の風味と、トリュフの芳醇な香りが重なり合い、口の中が幸せ状態。食べ進めるたびに繊細な余韻が心に残る一品だった。
ペアリング4杯目:ネカイ(イタリア/フリウリ・ヴァネツィア・ジュリア)
こちらはフリウラーノ100%のオレンジワイン(白ワインの葡萄を赤ワインと同じく果皮や種と一緒に醸して造られたワイン)で、葡萄に貴腐菌をつけてから落とすという方法を取っている、唯一無二のワイン。
色味はオレンジワインというより普通の白ワインにも見えるこのワインの味わいは、単体だとそれなりに甘味があるが、ラヴィオリと合わせた時だけワインの青っぽさが味をいい感じに締めていて、最後にワインの甘味の余韻を感じるという、これまた面白みのある取り合わせとなっている。
7品目:仔鴨と小さな楽しみ
見事な火入れが施された仔鴨の胸肉は淡いピンク色がなんとも美しかった。
お肉もしっとりしていて、噛むほどにジューシーな旨味を感じる。表面は香ばしく焼き上げられ、皮目のカリッとした質感と内側の柔らかさが絶妙だ。
添えられた季節の野菜も色鮮やかで、それぞれが丁寧に調理され、素材本来の甘みや食感が引き立てられている。
仔鴨の旨味を引き立てるソースは重すぎず、肉の甘みを包み込みながら余韻を残す仕上がりになっており、お腹いっぱいになってしまうこともなく美味しく食べられた。
そしてよく見るとハート型のそら豆のニョッキが。これは……キュンとする可愛さだ。
このハートが「小さな楽しみ」なのだと思っていたが、楽しみというのは、こちら。小さなバンズに挟まったフォアグラのハンバーガーだ。鴨肉を食べた後に出てくる鴨の肝臓というのも、なんともニクい話だが、正直フォアグラ大好きな私のテンションは上がってしまって仕方なかった。
シナモンの風味も感じられて、なおかつ岩塩の食感も楽しく、美味しく頂いたのだが、この一口ハンバーガーは、この大きさだからこその絶妙なバランスだということだ。正直、一皿ごとの量の調節が完璧すぎて驚いている。
ペアリング5・6杯目(飲み比べ):カラパーチェ サグランティーノ ディ モンテファルコ(イタリア/ウンブリア)・バルバレスコ アルベサーニ(イタリア/ピエモンテ)
仔鴨のローストと、フォアグラのハンバーガーをいただく際、2種類の赤ワインのペアリングをおすすめしていただいた。写真左はサグランティーノという品種を使ったウンブリア州の赤ワインで、右はネッビオーロという品種を使ったピエモンテ州のバルバレスコだ。
サグランティーノはウンブリア州の土着品種で、タンニンの力強さが特徴。
しっかりとした骨格と濃密な果実味、ほのかなスパイスの香りが、鴨のステーキのジューシーな旨味にぴたりと合っていた。鴨肉の皮目の香ばしさや脂の甘みが、サグランティーノの濃厚なタンニンによって引き締められ、互いに余韻を高め合う組み合わせに。このワインの力強さと鴨肉の深い味わいが、どっしりとした満足感を感じさせるペアリングだった。
一方バルバレスコは、ピエモンテ州のネッビオーロ種から作られるワインで、サグランティーノとは対照的に、エレガントで繊細なスタイルが特徴だ。
フォアグラのハンバーガーには、ワインの熟成感や、赤い果実のような酸味が非常に効果的に作用していた。フォアグラの濃厚で滑らかな脂と、バルバレスコの綺麗なタンニンが合わさることで、口の中に繊細ながらも重厚な余韻が広がっていてソツがなかった。
さらに、ネッビオーロ特有の花やスパイスの香りがフォアグラのリッチさに寄り添い、重すぎないエレガンスを感じさせるバランスの良いペアリングであった。
8品目:フロマージュ
フロマージュまでいける腹具合で、結局勧めていただいた中の全ての種類をいただいた私。その中でも、ノルウェーのヤギのチーズ、スキクイーンが特に美味しかった。
ヤギのホエイを絡める状になるまで煮詰めて、ヤギの乳を加えて作られたチーズなのだが、本当にキャラメルのようなねっとりした食感と味の濃縮感と甘味がしっかりと感じられて、控えめに言って素晴らしいほどの味わい。食後酒にもピッタリであった。
ペアリング7・8杯目:ドメーヌ ド ラ マドンヌ ボジョレーヴィラージュ(フランス/ボジョレー)・メロイ ピコリット(イタリア/フリウリ)
こちらもフロマージュとともに2種類の飲み比べをさせていただいた。、まずボジョレー地方のガメイ種を使用したボジョレーヴィラージュは、フレッシュで軽やかな果実味が存分に感じられる。口に含むと、チェリーやラズベリーのような赤い果実の風味が広がり、タンニンは控えめで飲み心地が良い印象。酸味も穏やかで、フルーティーさが際立っていた。
これをフロマージュと合わせることで、ワインの軽やかさがチーズの塩気やコクを優しく包み込み、バランスの良いペアリングに。白カビ系やフレッシュチーズのような繊細なフロマージュには、特にボジョレーのぴゅあぴゅあ~な果実感がぴったりだった。
一方のピコリットは、フリウリ地方の希少な甘口白ワイン。
貴腐菌の影響を受けて糖度が高くなった葡萄から造られるため、蜂蜜やアプリコット、ドライフルーツのような芳醇な甘みが広がる。一方で、ピコリットには適度な酸味があり、ただ甘いだけでなく、後味は驚くほどエレガントで上品である。
この甘美なワインがフロマージュと合わさったことにより、青カビ系チーズや熟成タイプのチーズの塩気や濃厚な旨味を、ワインの濃厚な甘味とほのかな酸味が引き立てる最高のマリアージュになっていた。鉄板と言えば鉄板だが、ワインの甘さとチーズの塩気が調和し、互いの風味を高め合う一口に仕上がっており、とても楽しんで味わうことが出来た。
9品目:ヴェッキオ・サンベーリのジェラート
「ヴェッキオ・サンベーリのジェラート」は、一般的なジェラートのような甘さだけではなく、まったりとコクのある後味が心地よい。
というのも、実はマルサラと同じグリッロという品種を用いて作られた熟成ワイン「ヴェッキオ・サンベーリ」が使われているのだ。
余計なものを削ぎ落としたシンプルさが際立っていて、まさに「素材本来の味わい」を楽しむジェラートだと感じた。
10品目:チョコレート ヘーゼルナッツ
最後は「チョコレート ヘーゼルナッツ」。食感を楽しみながら、重すぎないナッツとチョコレートの味わいを楽しんだ。
食後は紅茶かハーブティー、コーヒーから選ぶことが可能。最後に一息つける幸せといったらない。
こちらはハーブティ。私の友人が頼んだのだが、レモングラスの良い香りが漂っていた。
コースの金額について
シェフのお任せコース全10皿は16,500円(税込)。ワインのペアリングは確か12,000円程度だったように思う。
全体として、とても他の店では味わえないような独自性もあり、特にワインペアリングでは、自分は思いつかないような味わいが沢山あり、私自身も沢山発見があり楽しませていただいたので、高いと思わない金額だった。なんならすぐにでもリピートしたくなったほどである。
まとめ
中目黒駅から数分の場所に、こんなに美味しいイタリアンがあるなんて知りもしなかった私だが、私がこのお店の食事を済ませる頃には、お客の方々が満足げに、スタッフの方に「とても楽しかった、また絶対来ます」と言っていたのを旗目に見ていた。
そして私自身も、帰る頃にはまた絶対に再来したいと誓ったほど楽しいひとときを過ごさせていただいた。
料理も素晴らしく、ペアリングもまた唯一無二。かなり久しぶりにこんな素敵な場所に出会えたと感じた。特にワイン好きな方にはぜひ食事と共にワインペアリングを一緒にお願いすることをお勧めする。