先日、ドイツ・ラインヘッセンの有名ワイナリー「ドライスィアッカー」の生産者、ヨハン・ドライスィアッカー氏が来日するとのことで、試飲会に参加してきたワタクシ、らむこ。
きっかけは、正規輸入元であるインポーター《ヴィントナーズ》さんからのお誘い。こんな貴重な機会、ワイン好きとしては逃せない……!
ヨハンさんはワイン造りに対してとにかくストイックで、なんとドイツのグラスメーカー「ツヴィーゼル(ZWIESEL)」と一緒に、リースリングのための特注グラスまで作ってしまうほどのこだわり。
今回はそんな究極のワイン×究極のグラスで味わう、贅沢すぎる試飲体験をレポートしていきたい。
- ドイツ・ラインヘッセンの注目ワイナリー「ドライスィアッカー」とは?
- 会場は三田駅すぐの「ツヴィーゼル・ジャパン」ショールーム
- 世界的グラスブランド「ツヴィーゼル」とは?
- リースリングのためのグラス開発に1年!ドライスィアッカー×ツヴィーゼルの“完璧主義”コラボ
- 試飲ワインレポート|ドライスィアッカーのリースリング4種を比較
- 生産者に聞いたこだわりと哲学|ヨハン・ドライスィアッカー氏の言葉
- まとめ|“完璧を目指す”からこそ生まれた唯一無二の体験
ドイツ・ラインヘッセンの注目ワイナリー「ドライスィアッカー」とは?
ドイツ最大のワイン産地・ラインヘッセンにて、1728年から続く家族経営の老舗ワイナリー「DREISSIGACKER(ドライスィアッカー)」。
現オーナーのヨハン・ドライスィアッカー氏が引き継いでからは「革新こそが伝統を守る」との考えのもと、ワイナリーを丸ごと再設計。
2019年からはすべての畑でビオディナミ農法を導入し、野生酵母による自然な発酵を行うなど、“妥協のない”ワイン造りを徹底している。
会場は三田駅すぐの「ツヴィーゼル・ジャパン」ショールーム
今回の試飲会は、ドイツグラスメーカー「ツヴィーゼル」の日本法人である《ツヴィーゼル・ジャパン》のショールームで開催。
最寄りは都営三田線「三田駅」。スタイリッシュな空間で、特別なワインと特別なグラスが出迎えてくれた。
世界的グラスブランド「ツヴィーゼル」とは?
ツヴィーゼル(ZWIESEL)は、バカラ、ロブマイヤー、リーデルと並ぶ世界的なグラスメーカーの一つ。
1872年創業のドイツ・バイエルン発の老舗ブランドで、150年以上という歴史を持つ。ドイツのエアランゲン大学と共同開発した「トリタンクリスタル」は、輝きと耐久性、環境への配慮を兼ね備え、世界の高級ホテルやレストラン、大使館、航空会社などで愛用されている。
今回の試飲では、ドライスィアッカーのために開発された専用グラス(なんと1脚税込16,500円)を使用。さらにこのグラスを、なんと2脚もお土産としていただけるという贅沢すぎる体験をさせて頂いた。
リースリングのためのグラス開発に1年!ドライスィアッカー×ツヴィーゼルの“完璧主義”コラボ
「このワインに合う、完璧なグラスがない」——そう感じたヨハン氏が、ツヴィーゼルとともに1年をかけてグラスを共同開発。
最初はこのワインに合う既存のグラスを探し、数々のグラスとワインを合わせたものの、完璧な組み合わせは見つからなかったという。
これは一つの挑戦だった、と語る彼らがこだわり抜いたその形状は以下のような特徴を持つ。
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ボールサイドが広く、くぼみのある構造
⇒ボールサイドを広く持つことでワインと空気の接触面が広くなるため、ワインを多く入れたとしても香りが立ちやすい構造になっている。 -
ややすぼまった飲み口&超薄のリム
⇒リースリングの繊細な香りと口当たりを最大限に引き出すのが、超薄のリム。リースリングのドライさを引き出す、ややすぼまった飲み口もポイントだ。 -
グラス同士が当たっても割れにくい耐久性
⇒ロゴにもある音符(♪)にある通り、「ツヴィーゼルの音」はこだわりポイント。グラス同士の音がしても割れず、美しい音色を奏でるほどの耐久性があるということ。
これはただ単に硬いのではなく、もしかすると柔軟性があるのかもしれないと個人的には思っている。
というのも、グラスのフットを軽く押さえてからボウルを左右に少しだけ動かすと、なんと若干曲がるのだ。
(※やりすぎると割れてしまうかもしれないので、真似は絶対におすすめしないが(笑))
そんなグラスが出来上がるまでには数々の苦労があったという。
というのも開発時、現ワイナリーのオーナーであるヨハン氏には、こだわりすぎるほどのこだわりがあったといい、それこそオーダーはmm単位。
なんと試作は10回以上に渡ったという。
例えばこれがブルゴーニュの木樽を使ったシャルドネのワインなら、リムの直径をもっと広くしているだろう、とのこと。
このグラスこそ、まさにこの「ドライスィアッカー」のワインを楽しむ完璧なグラスなのである。
また、使用されたデキャンタもツヴィーゼル製で、伝統的な手法を用いたヒビ割れ入りのもの。
何百年も前からの手法だそうで、1200度ほどの温度でグラスを成形した後に、おがくずのようなやわらかいものに浸し、その後に冷水に入れることで、美しくひび割れるのだそう。
また、このデキャンタの底に使われていたのはフィンランド製の石で、冷却用としても機能している。冷蔵庫で冷やして温度を保つ。
デキャンタとの接地面を見て、柔らかめの石だということに気づいた。ガラスと石なんて、確かに何度も置いていたらガラスが傷ついてしまうに違いない。この石の柔らかさも重要なのではないだろうか。
蛇足だが、現地のフィンランド人は、サウナに入る際にこの材質の石(いわゆるサウナストーン)を持ち込むらしい。火成岩(花崗岩)であり、高い熱伝導率と保温効果を持つという。
それをデキャンタの土台用に使うとは、、、!
実用性もさることながらユーモアも感じさせてくれた。
試飲ワインレポート|ドライスィアッカーのリースリング4種を比較
ということで、ついに試飲が始まった。冒頭で述べたように、試飲したのはリースリング種を使ったワイン4種。下記に軽く味わった感想などを述べていきたい。
1. エステート・オーガニック・リースリング(税込4,620円)
野生酵母により発酵、4ヶ月のシュール・リー熟成をさせたワイン。
スワリングしていくうちに立ち上ってきたキャンディのような甘い香りが心地よい。
気軽に飲めるテーブルワインとして設計されており、エレガントながら程よいボディ感で、気軽に楽しめる味わいになっている。
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2. ヴィンテージ・ナンバー・ファイブ(日本未輸入)
ドイツの中で初の試みをしたと語られたこのワイン。
氏いわく、「シャンパーニュと同じだが、泡がなく、リースリングを用いている」とのこと。この言葉を紐解くと、2017~2023年の7つのヴィンテージをアッサンブラージュしているという話である。
「良いワインは時間が必要」と語るその理由には、リースリングへの愛がうかがえる。
というのも、リースリングといえばその酸味が理由で敬遠されることもあるが、寝かせることによって、フレッシュな味わいなのにも関わらず、円味が生まれることによって、輝きを放つほどの味わいになる。
そんなジューシーで熟した味わいを作るために、異なる地域のブドウ畑から収穫しているのもこだわりの一つ。
比較的暖かいラインヘッセンと、冷涼なベヒトハイム両地域のものを用いて、どちらの良さも取り入れられるようにしたという。
リースリングの美しいドライさがより際立つ構成になっており、個人的には好みの逸品であった。
3. ワンダーワーク・リースリング(税込16,500円)
「奇跡の作品」との名を冠するフラッグシップのワイン。熟成は1年のシュール・リーを経た後に、約5年のあいだ蔵内で寝かせ、リリースされた特別なワインなのだ。
30〜50年の古木ブドウからしか生み出せないという、圧倒的なバランスと存在感は、生産者も今回の4種類のワインの中で一番お気に入りの一本だそうだ。
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4. ガイヤースベルク・リースリング(日本未輸入・世界で2442本限定)
収穫してから10年はしないと世に出せないポテンシャルを持つワイン。
2442本のみ瓶詰されており、ラベル裏にはシリアルナンバーがそれぞれ書かれている。
特別なアロマとの言葉どおり、ナッツの香りが鼻だけでなく口内いっぱいに広がるようだった。
現時点でミネラルかつジューシーな贅沢感あふれる味わいだが、なんと30-40年の熟成にも耐えうるという。
うーーーん、それも納得である。
生産者に聞いたこだわりと哲学|ヨハン・ドライスィアッカー氏の言葉
ひととおり試飲させていただいた後は、質疑応答の時間に。
生産者ならではの面白い回答が多数あったので、こちらも是非シェアさせていただきたい。
Q.野生酵母発酵のコツは?苦労することはないのか?
A.なんと、ワイン畑をしっかりと整えていたら、割と思い通りの味になるらしい。野生酵母という名前の通り、自然によるものなので、もっと暴れん坊のイメージだったのだが、やはり理想の環境を追求することで、酵母さえも寄り添ってくれるのかもしれない。
あとは樽をワインでピッタリと満たしておくことや、最初は20度に温度管理し、発酵が始まったら温度を下げるなどの、ちょっとしたコツもあるそうだ。
ちなみに、ワイン畑を整える前は、酵母の独特な匂いがあったそうなのだが、整ってからはその匂いを感じなくなるくらい、明らかに香りの変化があったという。
Q.ブドウを足で踏む理由は?
A.ブドウの足踏みといえば、破砕機のなかった時代からの伝統的な方法だが、このワイナリーでは現在も行われているらしい。
理由としては、果実だけをそっと押したいと思った場合、人間の足が一番感覚が繊細だからだとのこと。
皮の部分からできるだけアロマを吸収できるようにという狙いがあり、そこから搾汁に入るとのこと。
まとめ|“完璧を目指す”からこそ生まれた唯一無二の体験
今回の試飲会で感じたのは、ドライスィアッカーの「妥協なき完璧主義」。
その姿勢はワインだけでなく、グラスにまで表れていた。
価格帯こそ高めではあるものの、その裏にある理由や物語を知れば、むしろ納得感が増す。
「本当に美味しいリースリングとは?」
それを知りたい方には、ぜひ一度ワインを味わってほしいワイナリーであった。