
奥多摩駅を出てわずか数十秒。駅前の通り沿いに、出汁巻き卵一本で勝負する専門店がある。だしまき玉子専門店『卵道(ランウェイ)』。店名はTAMAコレクションのシリーズ名でもあり、多摩の食材を軸にした地域密着の一軒である。
テレビ・雑誌のメディア露出は数十回を超え、ヒルナンデス、ラヴィット、アド街ック天国、ZIPなど全国ネットの番組で幾度も取り上げられてきた名店。実際に訪れてみると、その人気には明確な理由があった。
奥多摩駅徒歩2分、旅の入口にある一軒

JR青梅線の終点・奥多摩駅から徒歩2分、駅から64mという立地。自然の中に佇む観光地の飲食店にありがちな「車がないと行けない」状態とは無縁で、登山やハイキングの行き帰りにそのまま寄れるアクセスの良さが光る。
店内は古民家調の落ち着いた空間で、観光客と思われる人々で賑わっていた。喧騒はなく、それでいて活気がある。出汁の香りが立ち込める店内は、訪れた瞬間から「ここは出汁巻き卵の場所なのだ」と感覚で理解できる。

卵と出汁の仕事を味わう

今回注文したのは以下のラインナップである。
- 限定の烏骨鶏だしまき定食(生卵付き) 1800円
- 白だしまき定食(ホワイト卵) 1500円
- 卵道プリン 400円
- 東京茶碗蒸し(東京烏骨鶏×東京軍鶏) 680円
- 澤乃井 特別純米 6勺 750円
限定・烏骨鶏だしまき定食(生卵付き)
看板商品の出汁巻き卵には、驚くことに卵4つが使われている。使用されているのは青梅のかわなべ鶏卵──深美卵・ホワイト卵・烏骨鶏を取り扱う卵専門の生産者である。
烏骨鶏の卵はとにかく濃い。一般的な卵と比べて黄身の風味が凝縮されており、出汁巻きにすることで卵本来のコクが最大限に引き出される。添えられる生卵を絡めれば、さらに濃密な一口になる。わっぱに盛られたご飯との相性も良く、口の中で出汁と卵と米が重なっていく感覚は、専門店でしか味わえない体験である。
白だしまき定食(ホワイト卵)
対照的に、こちらはホワイト卵を使用した白い出汁巻き。黄身の色が淡く、見た目の軽やかさに反して出汁の主張が非常に強い。
一口目で感じるのは、まず出汁の奥行き。多摩源流・小菅村の水とブレンドした国産素材で丁寧に引かれた出汁が、卵の中にきちんと染み込んでいる。卵のまろやかさと出汁の余韻が交互に押し寄せ、気がつくとわっぱご飯が半分なくなっている。出汁の仕事に集中して味わいたい人には、烏骨鶏よりこちらを推したい。
【専門知識コラム】多摩源流・小菅村の水と出汁文化
多摩川の源流にあたる山梨県・小菅村は、東京都の水源林に指定されている地域である。軟水でミネラルバランスに優れており、日本料理の出汁引きには理想的な水質とされる。出汁の主成分であるグルタミン酸・イノシン酸を抽出する際、水の硬度が低いほど雑味が出にくく素材の味が立つため、和食の現場では軟水が好まれてきた。多摩の水を使って多摩の料理を完成させる──『卵道』の設計には、素材の地理的な必然性がある。
東京茶碗蒸し ── 東京烏骨鶏×東京軍鶏

冷やしも温かいのも選べる茶碗蒸し。東京烏骨鶏と東京軍鶏という、どちらも主張のある素材が使われている。卵の濃さを烏骨鶏が担い、だし出汁の厚みを軍鶏が補強する構造で、茶碗蒸しの「卵の料理としての側面」と「出汁料理としての側面」の両立に成功している。680円という価格設定も専門店として良心的である。
卵道プリン ── 出汁巻き専門店の本気のプリン

「出汁巻き専門店が作るプリン」というコンセプトそのものが強い。実際に食べてみると、その期待を裏切らない濃密さ。なめらかな舌触りの中に、卵のコクが力強く立ち上がる。卵の質に全振りしている店ならではの仕上がりで、定食の後のデザートとしてだけでなく、単品でも十分に目的地になる。
合わせる酒 ── 澤乃井・嘉泉・多満自慢

酒は山と川の恩恵を受けた多摩の名産品が揃う。今回いただいたのは澤乃井の特別純米を6勺。出汁の引き立つ料理には、純米の旨味がよく寄り添う。飲み比べセットも用意されており、澤乃井(青梅)・嘉泉(福生)・多満自慢(拝島)といった多摩のラインナップを一度に楽しめる構成になっている。昼呑みの目的地としても成立する一軒である。
【専門知識コラム】青梅・かわなべ鶏卵という選択
かわなべ鶏卵は東京都青梅市の養鶏場で、ブランド卵「深美卵」のほか、ホワイト卵や烏骨鶏といった特殊卵まで手広く扱う数少ない生産者である。烏骨鶏は産卵数が極端に少ないため流通量も限定的で、出汁巻きとして提供している店舗は都内でも稀。地元・多摩の卵生産者から直接仕入れる姿勢は、『卵道』が観光地の見せかけの地産地消ではなく、実質的な地域内循環の店であることを示している。
お土産も買って帰れる

店頭では出汁巻き卵・プリン・焼き菓子のテイクアウトも可能。奥多摩まで足を運んだ記念に、自宅用・贈答用に持ち帰るのも楽しみ方のひとつである。
立川エキュート店なら、奥多摩まで行かなくても卵道が買える
奥多摩までは少し遠い、でも卵道の出汁巻きが食べたい――そんな方には立川駅エキュート2Fの『卵道 エキュート立川店』という選択肢がある。JR立川駅直結の駅ナカ立地で、仕事帰りや買い物のついでに立ち寄れる利便性が魅力だ。

立川店の魅力は季節限定メニューと、立川店オリジナル商品の充実。今回訪れた時期は春色「桜えびのだしまき」が並んでいた。出汁巻き卵に桜えびを織り込んだ春らしい一品で、季節ごとの限定メニューは立川店ならではの楽しみとなっている。

ショーケースを覗くと、奥多摩本店ではお目にかかれない商品がいくつもある。だしまきサンド(540円)は厚切りの出汁巻き玉子をパンで挟んだ食べ歩きにも適した一品。ふわふわ卵サンドも人気で、駅ナカ立地ならではの「軽食ニーズ」に応えるラインナップが充実している。
主な販売商品と価格は以下の通り:
- 白だしまき玉子 1100円
- 東京烏骨鶏だしまき玉子 1300円
- 桜えびのだしまき(季節限定) 価格は時期により変動
- 卵道プリン 432円
- 白プリン 486円
- 焼きプリン 486円
- だしまきサンド 540円
- 東京茶碗蒸し 680円
手書きの取扱説明書という、専門店ならではの心遣い

立川店で商品を購入すると、手書きの取扱説明書「卵道のススメ」が同封される。そこには商品の保存方法だけでなく、家庭で楽しむための具体的な食べ方提案まで丁寧に書かれている。
- 購入後はできるだけ早く食べる(時間が経つと出汁が流れてしまう)
- すぐ食べられない場合は冷蔵庫へ
- 冷たいままでもOK、レンジで温めてもOK
- トッピング定番:大根おろし
- 変わりダネ:①梅 ②わさび
- アレンジ:だしまき茶漬け(ご飯に出汁巻きを乗せ、お茶漬けの素とお湯をかける)
「だしまき玉子はさみしがり屋です。寒さで震えてしまうので、早めに食べてあげて下さい」――こんな商品への愛情が伝わる文言が並ぶ。マニュアル化された大量生産の店ではなく、ひとつひとつの商品を丁寧に届けようとする姿勢が、こんな小さな紙切れひとつ
木製舟皿で届く、持ち帰り用の白だしまき玉子

立川店で持ち帰った白だしまき玉子(1100円)は、木製の舟皿に入れられて届く。卵道のロゴが焼印で押された舟皿と、添えられた笹の葉が、専門店ならではの世界観を持ち帰り商品でも貫いている。
包装はラップで密閉されているが、開けた瞬間に出汁の香りがふわりと立ち上がる。店内で食べたものと同じく、ホワイト卵のまろやかさと多摩源流の水で引いた出汁の奥行きがしっかりと感じられる。レンジで軽く温めると風味が一段階開くが、冷たいままでも十分に美味しい。
この見た目の美しさ+出汁の品質の両立は、ギフト用途に強い。1100円という価格帯は、ちょっとした手土産として渡すには絶妙な金額設定で、相手にも喜ばれること間違いなし。
卵道プリンと白プリン、家での食べ比べ

同じく持ち帰った卵道プリン(432円)と白プリン(486円)。家に持ち帰って並べてみると、黄色と白の対比が美しい。
卵道プリンは店内で食べた時と同じく、卵のコクが力強い濃密な仕上がり。一方の白プリンは、ホワイト卵の卵白を活かしたやさしい乳白色で、卵黄プリンとは全く異なる軽やかでミルキーな味わい。同じ「卵プリン」というカテゴリの中でも、卵の使い方ひとつでこれだけ別物になるのかと驚かされる。
駅から家まで移動時間がある場合は、保冷剤付きの保冷袋(30〜60円)も購入できる。シンプル保冷バッグ200円、オリジナル保冷バッグ600円というラインナップで、暑い時期の持ち運びも安心だ。
奥多摩まで行く時間がない日でも、立川駅で乗り換えるついでに立ち寄れる卵道。駅ナカという立地と、職人の手仕事という卵道らしさが両立した、便利で贅沢な選択肢である。
店舗情報
| 店名 | だしまき玉子専門店 卵道(ランウェイ) TAMAコレクション |
| 住所 | 東京都西多摩郡奥多摩町氷川207 |
| 電話 | 0428-85-8687 |
| アクセス | JR青梅線 奥多摩駅 徒歩2分(駅から64m) |
| 営業時間 | 月・水・木・金・土・日 11:00〜17:00 |
| 定休日 | 火曜日 |
| 決済方法 | 現金・PayPay(カード・電子マネー不可) |
| @ranway_dasimaki |
※決済はカード・電子マネー非対応。現金またはPayPayのみなので、訪問前に準備しておくと安心である。
立川店(エキュート立川)
| 店名 | だしまき玉子専門店 卵道 エキュート立川店 |
| 住所 | 東京都立川市柴崎町3-1-1 エキュート立川 2F |
| 営業時間 | 月〜土 10:00〜21:00/日・祝 10:00〜20:00 |
| 決済方法 | クレジットカード・電子マネー・QRコード決済対応 |
まとめ
『卵道』は、奥多摩という土地の水と卵と酒を、出汁巻きという一皿で束ねる店である。観光地の飲食店にありがちな「風景でごまかす」要素はなく、素材と技術で成立している。多摩の地産地消を掲げる飲食店は多いが、ここまで素材の経路が明確で、かつ専門店として一品に全振りしている店は珍しい。
奥多摩ハイキングや御岳山・氷川渓谷観光の行き帰りに、ぜひ立ち寄ってほしい一軒。時間がなくて奥多摩まで行けない日には、立川エキュート店で出汁巻きとプリンをテイクアウトするという選択肢もある。どちらにしても、多摩の水と卵の仕事を、自分のペースで味わえる場所である。
※掲載情報は訪問時点のものである。最新の営業時間・価格は公式Instagram(@ranway_dasimaki)にて確認いただきたい。
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この記事を書いた人:らむこ
おいしいものと人の温かさを探して、あちこち食べ歩いています。
レビュー歴10年以上、Googleレビューでは全国上位5%のレビュアーとして活動中。ブログやSNSでは、料理の味だけでなく、空間や人柄、ちょっとした気づきまで伝わるようなレポートを心がけています。
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