右手にはワインを、左手にはビールを。

美味しいの裏側には、作り手のストーリーがある。Googleレビュー上位5%の酒好きが綴る食と酒のノンフィクション。

ProWine Tokyo 2025現地レポ|日本・フランス・NYワインの最前線を体験!

にほんブログ村 酒ブログ 海外ビール・地ビールへ
にほんブログ村

ProWineTokyo2025は東京ビックサイトにて開催された

ProWineTokyo2025は東京ビックサイトにて開催

2025年4月、東京ビッグサイトで開催された国際ワイン展示会「ProWine Tokyo 2025」。その中でも特に注目を集めていたのが、有識者によるセミナーシリーズ

今回は私が実際に参加した3本のセミナーをレポート形式でご紹介。日本のワイン市場の動向から、中華料理との意外なペアリング、そしてニューヨークワインの最前線まで、現場の空気感とともにお届けしていきたい。

 

\この記事でわかること/

  • 日本のワイン市場は今どうなっている?統計と専門家の視点から見た最新動向
  • フランス・ギガルのワインと中華料理の驚きのマリアージュ体験
  • ニューヨークワインの今:冷涼地から届いた注目の造り手たちとそのワイン

第1章:激変する日本ワイン市場の現在地と未来戦略

〜統計×専門家視点で読み解くProWine Tokyo 2025セミナーレポート〜

日本ワイン市場の「今」を知る:国税庁とKIRINレポートの示す最新傾向

(出典:キリンホールディングス マーケットレポート2023(キリンホールディングス)令和6年6月酒レポート(国税庁)

日本のワイン消費は第7次ブームへ

市場に関するレポートから読み解けるのは下記の通り。実は現在の日本はワイン消費が第7次ブームの渦中にいるとのこと。

  • 1972年から始まった日本のワインブームは、1997〜98年の第5次ブーム(チリワインや安価な輸入ワインの躍進)でピークを迎え、今は多様化と安定のフェーズに入っている。
  • スパークリングワインは2013年以降急成長。特にイタリア・スペイン産が人気。
  • ECやドラッグストアなど購入チャネルの多様化が進行。
  • 日本ワインは全国で拡大中だが、依然シェアは5%台と限定的。
  • オーガニック・オレンジワインなど、自然志向系の関心が高まる。

この情報を、より詳しくプロの視点から解説していくセミナーとなっていた。

プロの視点で読み解く:遠藤利三郎氏(日本輸入ワイン協会理事長)の講演より

日本輸入ワイン協会理事長の遠藤利三郎氏によるワインセミナー

日本輸入ワイン協会理事長の遠藤利三郎氏によるワインセミナー

ワイン業界の第一人者である遠藤氏が、統計に裏打ちされた市場の構造変化を解説し、今後のチャンスをこう語っていた。

● 健康ブームと記憶に残る赤ワイン旋風

1998年:「動脈硬化に効く」→赤ワインが爆売れ、輸入元が追いつかないほど

玉ねぎを赤ワインに漬ける健康法まで流行

チリ産フロンテラなどが大量に入ってきた背景もここに

● 日本ワインは10年で倍増も、生産量は横ばい

約250社、佐賀以外の全都道府県で生産(現在佐賀県内でもワイナリーでのワイン販売を2025年内準備中)

ただし売れないワインも増えており、差別化やストーリーの発信が急務

オーガニック&ナチュラル系の進化と認知変化

「オーガニックワイン」の消費量は右肩上がり

その中で、「自然派ワイン」は検索数が減少=すでに“当たり前”の選択肢に?

一方、「オレンジワイン」は2方向に:フルーティ路線 or ワイルド自然派路線

→嗜好品から“自己表現・健康意識”としてのワイン選びへの移行を表しているのでは?

ワインの“家庭化”と流通革命

1990年代から外飲み→家飲みが多くなる

バルク輸入→国内瓶詰めでコスト半減する動きに

ECやコンビニでの購入が一般化し、高齢層のネット利用も進行中

→チャネル別マーケティングとローカル戦略の組み合わせが求められる時代に。

世界のワイン産地が変わる:醸造技術のグローバル化

地球温暖化でインド、モルドバ、東欧など新興地域でのワイン生産が拡大

醸造技術と設備があればどこでも造れる時代に

→だからこそ“なぜここで造るのか”というストーリー性が重視される

遠藤氏いわく「モルドバは注目株」。東欧ワインのポテンシャルが高まっています。

地方消費とイベントによる需要創出の可能性

東京都は1人あたりのワイン消費量8L超(アメリカ並)

酒販店の売上が高い地域は「観光地・土産需要」が強い

地方でも体験型イベントやフェスティバルによる“導線”づくりが有効

第一部まとめ:「統計×現場視点」で考える、次のワイン市場戦略

キーワード 解説
多様化 品種・価格帯・チャネル・飲用シーンすべてが広がっている
健康・環境 オーガニック・オレンジ・自然派が“選ばれる理由”に
小規模ワイナリーの台頭 作り手の顔が見える、地元消費に強い
EC・コンビニシフト 手軽さ重視、若年層・高齢層ともに動いている
地域密着と差別化 どこで・なぜ造るか?がブランド価値に直結

 

次章では、フランス・ローヌの名門「E.ギガル」と中華料理の奇跡的なペアリング体験をご紹介。

第2部|ギガルのワイン × 中華料理:ペアリングの新提案

著名ソムリエ近藤佑哉氏によるギガルのワイン×中華料理ペアリングセミナー

著名ソムリエ近藤佑哉氏によるギガルのワイン×中華料理ペアリングセミナー

次はワインの本場・ローヌ地方を代表する名門「E.ギガル」のワインと本格中華のマリアージュ——その深淵な世界を探るセミナーへ。

講師は著名ソムリエの近藤佑哉氏

ローヌワインの魅力と中華料理との絶妙なペアリングを、理論と実践で学ぶ貴重な体験をさせていただいた。

ペアリングの基本とは?

「ペアリング」と聞くと、“料理に合わせてワインを選ぶ”というイメージを持ちがちだが、本セミナーではその定義を再認識することに。

風味に寄り添い、最後まで調和し続けることが“真のペアリング”である。

その言葉通り、今回のセミナーでは、時間とともに変化する“味わいの関係性”に注目。ファーストインプレッションではなく、「最後まで合うか?」という視点がカギとなった。

テイスティングと料理のマリアージュ体験

ギガルの6種類のワインとペアリングする中華料理たち

ギガルの6種類のワインとペアリングする中華料理たち

① コンドリュー 2022(白ワイン) × 青椒肉絲(チンジャオロース)

ヴィオニエ100%、花崗岩土壌

アロマ:スパイス感+タンニン+包容力

結果:料理を丸ごと包む印象。柔らかく香りが開くベストペアリング

他ワインとも比較したが、④コートロティ(赤)では出汁が勝ち、③コート・デュ・ローヌ ロゼ(ロゼ)では筍の繊細さを損ねるなど、このワインが圧倒的に料理と調和。

② サン・ジョセフ・ブラン 2020(白ワイン)× 棒棒鶏(バンバンジー)

マルサンヌ95%、ルーサンヌ5%、花崗岩土壌

アロマ:ジャスミン、ルイボス、オレンジ、グリーン系

結果:脂の少ない鶏肉と相性抜群。胡麻だれの余韻を美しく受け止める

料理の風味を通り抜けるような立ち上がり方で、①コンドリュー(白)より繊細な相互作用が生まれた印象。

③ コート・デュ・ローヌ ロゼ 2022 (ロゼワイン)× 春雨サラダ

グルナッシュ70%、サンソー20%、シラー10%

アロマ:苺、クランベリー、ヨーグルト系

結果:最初はワインが勝つが、時間とともに料理を包み込む

繊細な酸味と鶏ガラ出汁の風味が調和。「時間経過とともに合っていく」という典型的なマリアージュ。

④ コート・ロティ “ブリュヌ・エ・ブロンド” 2020(赤ワイン)× 黒酢酢豚

シラー96%、ヴィオニエ4%、混醸による色調安定

アロマ:ブラックオリーブ、ペッパー、スミレ

結果:ワインが料理を押し上げるようなダイナミックな調和

特に酸味の強い酢豚との相性で、味わいの構造が六角形のようにワインが全方位を囲むような感覚が印象的。

⑤ サン・ジョセフ・ルージュ 2019(赤ワイン)× よだれ鶏

シラー100%

アロマ:スパイス、果実の甘み、鉄分、ロタンドン(黒胡椒様香気)

結果:一直線で交わるような刺激と調和。辛さと香りが交錯する一体感

まさに中華のスパイスに対抗しうる赤甘やかさが辛味と並走し、単なる“中和”ではない新たな関係性を築く。

⑥ ジゴンダス 2020(赤ワイン)× エビチリ

グルナッシュ50%、ムールヴェードル30%、シラー20%

アロマ:紫系果実、石灰、クリスマススパイス

結果:甲殻類とのマリアージュに最適。横幅と奥行きを両立

①コンドリュー(白)や③コート・デュ・ローヌ ロゼ(ロゼ)ではワインの縦方向が強すぎて食事に沿わず、⑤サン・ジョセフ・ルージュ(赤)では料理の強さに押され気味。一方こちらは「味わいの幅・奥行き・余韻の高さ」が料理と完全一致したマッチング。

第二部まとめ:ギガルのワインは“包み込む”

ギガルのワインの懐の深さに改めて気づかされた

ギガルのワインの懐の深さに改めて気づかされた

E.ギガルのワインは、「果実味→テクスチャー→酸→余韻」と続く流れが特徴的で、それぞれの料理に対して包み込むような調和を見せてくれる。

特に中華料理という“足し算”の料理において、スパイスや油の複雑さを「受け止めて膨らませる」能力は圧巻。まさにローヌの名手が成し得る芸術的ペアリングだ。

関連リンク・資料

・E.ギガル公式サイト(英語)https://www.guigal.com/fr/

第3部|ニューヨークワイン最前線:生産者とともに学ぶマスタークラス

ニューヨークワインを生産者たちの声から学ぶ

ニューヨークワインを生産者たちの声から学ぶ

「アメリカワイン=カリフォルニア」の時代はもう古い?

ということで、ニューヨーク州の冷涼産地から、ピュアでサステナブルな新しいスタイルのワインが次々と登場。

別府岳則氏と4ワイナリーの生産者による登壇だった。

主な産地と特徴

フィンガーレイクス:リースリングが主。寒冷地だが湖の効果で安定。ハイエンド多し。

ロングアイランド:ピノノワールやカベルネフランなど、ブルゴーニュを思わせるスタイルも。

レイクエリー:アメリカ系品種が中心。コンコードが主力。

テイスティングワインと感想

4種類のワイナリーの代表ワインをそれぞれテイスティング

4種類のワイナリーの代表ワインをそれぞれテイスティング
ワイン 生産者 コメント
Session Sparkling White NV Living Roots 甘さがジュースのようで飲みやすい。ハイブリッド品種使用の実験的な1本。
Dry Riesling 2023 Apollo’s Praise 初ヴィンテージとは思えない完成度。ピュアで香り高く印象的。★
Cabernet Franc 2023 Ria’s Wines テロワールを反映したナチュラル系赤。果実味と湿度感のバランスが絶妙。★
Pinot Noir 2017 McCall Wines ロングアイランドの実力。樽熟ピノが綺麗でスモーキー過ぎないのが◎。

MEMO

特に心に残ったのはApollo’s PraiseのドライリースリングとRia’s Winesのカベルネフラン。

どちらも冷涼地らしい酸のキレと清涼感がありながら、芯のある味わいが素晴らしかった。

総まとめ:日本・仏・米、3カ国に見るワインの現在地と未来

東京ビックサイトでの展示会は快晴での開催

東京ビックサイトでの展示会は快晴での開催

東京ビックサイトで開催されたProWine Tokyo 2025の3つのセミナーから見えてきたのは、ワイン市場の「多様化」と「深まり」

価格や産地だけでなく、「誰がどのように飲むか」に対する提案力こそが今後の鍵になりそうである。
ギガルのようにクラシックを追求しつつ革新を恐れない造り手や、ニューヨークのように環境や土地を活かした造り手の姿勢に、今後のワイン選びのヒントが詰まっているのかもしれない。

 

▽オススメ過去記事

www.cheers-winebeer.club

www.cheers-winebeer.club

www.cheers-winebeer.club