東京駅の地下、八重洲地下街の一角に、栗を使った和菓子の有名店がある。その名も、岐阜・恵那に本店を持つ「良平堂」。
お目当ては「栗福柿(くりふくがき)」。長野・市田産の干し柿の中に、栗きんとんがまるごと一つ忍ばせてある和菓子だ。しかもこの栗福柿、ただの和菓子ではない。食と産業の神を祀る伊勢神宮外宮に奉納されてきた一品である。
今回は、その物語と味を、実食しながら紹介したい。
栗福柿とは — 干し柿に栗きんとんを忍ばせた和菓子

「栗福柿」は、岐阜県恵那市の有限会社良平堂がつくる和菓子である。長野県市田産の干し柿の中に、栗きんとんをまるごと一つ詰めた、見た瞬間に「すごい!」と声が出る一品だ。
名前の「福柿」は、干し柿の「柿」が「嘉来(かき)」に通じることに由来するそう。古来、柿は縁起のよい果物として大切にされてきた。そこに「福を呼ぶ」を重ねた、縁起のいい銘である。
食の神に捧げられる — 伊勢神宮外宮への奉納と日本ギフト大賞
栗福柿を語るうえで欠かせないのが、伊勢神宮外宮への奉納である。良平堂は、伊勢商工会議所が主催する「外宮奉納市」を通じて、2013年から外宮へ和菓子を奉納し続けてきた。
ここで意味を持つのが「外宮」という場所だ。伊勢神宮の外宮に祀られるのは、衣食住と産業を司る神・豊受大御神(とようけのおおみかみ)。つまり食べ物の神様である。その御前に、菓子をつくる職人が「正直なものづくり」を誓い、自らの手でこしらえた一品を捧げる。栗福柿は、その文脈に名を連ねてきた菓子なのだ。
食の神に捧げられる、という背景を知ってから口にすると、素朴な甘さの輪郭が少し違って感じられる。これは単なる肩書きではなく、つくり手の姿勢が見える話だと思う。
伊勢神宮「外宮」と豊受大御神
- 外宮(げくう)とは
- 伊勢神宮は、天照大御神を祀る「内宮」と、豊受大御神を祀る「外宮」を中心に成り立つ。外宮はその名のとおり、もう一つの中心である。
- 豊受大御神(とようけのおおみかみ)
- 衣食住・産業を司る神。とりわけ「食」の守り神として知られ、食べ物を扱う生産者にとって特別な存在である。
- 外宮奉納市
- 伊勢商工会議所が主催し、各地の生産者が外宮の御前に生産物を奉納する取り組み。良平堂もここを通じて奉納を重ねてきた。
もう一つの実績が、2019年の日本ギフト大賞の受賞。テレビ番組「ヒルナンデス」をはじめ、数々のメディアでも取り上げられてきた。神前への奉納と、贈り物としての評価。この両方を持つ和菓子は、そう多くない。
実食レビュー — 半分に切った瞬間に、茶席を思った
箱を開けると、しっとりと飴色に輝く干し柿。市田柿らしい、ふっくらとした肉質が一目でわかる。
包丁で半分に切る。市田柿の艶やかな赤茶と、栗きんとんの淡いベージュ。この断面を見た瞬間、私はこれを茶席に出したらどうなるかを考えていた。黒文字を添えれば、客は一度手を止めるだろう。
「福が来る」という銘をひと言添えるだけで、「素敵!」と賑わう様子が目に浮かぶようだ。
口に運ぶと、干し柿の自然な甘みが先に来て、後から栗きんとんの素朴さが追いかけてくる。氷砂糖仕立ての甘さは、引き際が驚くほど軽い。良い素材ほど、余韻が潔い。
お茶は、煎茶よりもほうじ茶や和紅茶のような香ばしい系統がよく合い、日本酒のあてとしても面白いかもしれない。栗きんとんは熟成日本酒や貴醸酒との相性がよく知られていて、この栗福柿も同じ流れで楽しめる。
栗福柿を選ぶ理由 — 市田柿 × 恵那の栗 × 氷砂糖
この菓子の核は、素材の組み合わせにある。外側は、日本を代表する干し柿のブランド「市田柿」。中身は、栗きんとん発祥の地・恵那の国産栗を使った自家製栗きんとん。和の名産どうしを、ひとつに重ねている。
市田柿(いちだがき)って何?
市田柿は、長野県下伊那地方(飯田市・高森町など)で生産される干し柿のブランド品。2016年に農林水産省の「地理的表示(GI)保護産品」に登録された、日本を代表する干し柿である。
しっとりとろりとした肉質と、表面にうっすら浮く白い粉(果糖が結晶化した「果粉」)が特徴。お茶請けにも贈答にも使われる、いわば「干し柿のなかの干し柿」だ。
もう一つの鍵が氷砂糖。良平堂は上白糖ではなく氷砂糖を使う。純度の高いショ糖の結晶で、甘みがすっと引いていく。栗と柿それぞれの風味を邪魔せず、後味が軽やかに仕上がる理由はここにある。
原材料表示にも、しっかり「氷砂糖」と記載されている。
そして贈答用としての完成度。箱はしっかりとした作りで、1個ずつ個包装。日本ギフト大賞の受賞も納得の佇まいである。
もう一品 — 八重洲で出会った「ミニ和栗モンブラン」
栗福柿と一緒に買ったのが「ミニ和栗モンブラン」(¥594)。カップ底の正式名称は「ミニ大福和栗モンブラン」で、土台が大福(餅)という珍しいモンブランだ。芋あんを包んだ大福を土台に、栗きんとんを思わせる和栗のクリームを絞り、天面に渋皮栗の甘露煮をのせている。
栗のクリームは風味が濃く、ほんのりと甘い。下のもっちりした大福と中の芋あんが、クリームとよく馴染んでいる。栗・芋・餅という、ほっくり系の素材が重なって、最後まで素朴な味わいが続く。食べ切りサイズで、ちょっとした自分へのご褒美にちょうどよい。
良平堂には、このほかにも芋あん大福を栗きんとんで包んだ「栗きんとんモンブラン(スイートポテト大福)」や、栗きんとん入りの大福を使った「栗きんとん大福モンブラン」など、栗のモンブランが何種類かある。
中身が芋あんか栗きんとんかで風味が変わるとのことなので、通販で選ぶときは中身をチェックしておくと良いかもしれない。
商品情報・購入方法
栗福柿やモンブランは通販でも販売されていて、贈答でも扱いやすい。一方、今回いただいたミニサイズは店舗のみのようなので注意が必要だ。
栗福柿
| 商品名 | 干し柿の中に栗きんとん入 栗福柿 |
|---|---|
| 内容量 | 1個 約43g(4・6・8・10・15・20入の箱もあり)。店舗限定「ちょっと大きな栗福柿」もあり |
| 原材料 | 干し柿(国内製造)、栗、氷砂糖、砂糖/トレハロース |
| 賞味期限 | 配送日含めて7日 |
| 保存方法 | 常温(直射日光・高温多湿を避ける) |
| 製造者 | 有限会社 良平堂(岐阜県恵那市大井町2714-66) |
ミニ和栗モンブラン
| 商品名 | ミニ和栗モンブラン(正式名:ミニ大福和栗モンブラン) |
|---|---|
| 主な原材料 | 栗(国産)、砂糖、氷砂糖、芋ペースト、餅粉、渋皮栗甘露煮、手亡、生クリーム ほか/一部に乳成分を含む |
| 保存方法 | 要冷蔵(10℃以下)/消費期限は枠外側面に記載(生菓子のため当日中が目安) |
※モンブランの製造設備では小麦・卵を含む商品も製造。アレルギーのある方は最新の表示を確認してほしい。最新の価格は各ショップで確認を。
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こんな人におすすめ
- 縁起のよい手土産・贈り物を探している人:「嘉来」「福来る」、しかも食の神に奉納される菓子は慶事や感謝の席に映える
- 干し柿と栗きんとん、どちらも好きな人:和×和の組み合わせを一度に味わえる
- 甘すぎる和菓子が苦手な人:氷砂糖仕立てで、後味が軽い
- 東京で恵那の栗菓子を手に入れたい人:八重洲店で栗福柿もモンブランも買える
- 茶席のお茶請けを探している人:断面の美しさと銘の由来で、一席の会話が生まれる
店舗情報(東京八重洲店・本店)
| 店舗名 | 恵那栗工房 良平堂 東京八重洲店 |
|---|---|
| 住所 | 東京都中央区八重洲2-1 ヤエチカ(八重洲地下街)B1F |
| 営業時間 | 10:00〜20:00(施設に準ずる) |
| 定休日 | なし(施設に準ずる) |
| アクセス | JR・東京メトロ「東京駅」直結、八重洲地下街 |
| 本店 | 岐阜県恵那市大井町2714-66/営業10:00〜16:00/水曜定休(栗カフェ併設) |
| 配送 | 全国配送あり |
| 公式オンラインショップ | https://enakuri.ocnk.net/ |
※営業時間・取り扱いは記事執筆時点(2026年6月)の情報。最新情報は公式サイトおよび施設情報を確認してほしい。
まとめ
栗福柿は、長野・市田の干し柿と、岐阜・恵那の栗きんとん。和の名産どうしを、ひとつに重ねた銘菓である。
そして何より、食の神を祀る伊勢神宮外宮に奉納されてきたという背景。氷砂糖仕立てのやさしい甘さ、半分に切ったときの美しい断面、日本ギフト大賞の受賞。「贈って失敗しない和菓子」を探しているなら、まず候補に入れてほしい一品だ。
東京・八重洲店なら、栗福柿に加えて要冷蔵の「ミニ和栗モンブラン」も手に入る。自分用には生菓子のモンブラン、贈答には常温で日持ちする栗福柿。恵那まで行かずとも、東京駅でその味に出会える。
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この記事を書いた人:らむこ
おいしいものと人の温かさを探して、あちこち食べ歩いています。
レビュー歴10年以上、Googleレビューで上位レビュアーとして活動中。ブログやSNSでは、料理の味だけでなく、空間や人柄、ちょっとした気づきまで伝わるようなレポートを心がけています。
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