高糖度ミニトマト「さわとまと」を生産する東京・府中市の澤藤園が、2026年4月開催の第5回全国ミニトマト選手権で快挙を達成した。
新作「さわとまと柔」が最高金賞(1位・日本一)+特別賞「感動の一粒」を受賞。
さらに同時出品した「さわとまと極み」が金賞(2位)+特別賞「ベストバランス」を受賞し、1社で4タイトルを独占するという、全国青果物選手権でも極めて異例の結果となった。
しかし、この快挙の裏には「ミディアム部門3連覇を諦める」という戦略的判断があったという。
3月に一緒に働く身内の怪我により管理作業に制約が生じる中、限られたリソースをミニトマト部門に集中させ、悲願だった全国ミニトマト選手権での最高金賞への返り咲きを実現した。
振り返れば澤藤園は、第2回全国ミニトマト選手権、第3回・第4回全国トマト選手権ミディアム部門、そして今回の第5回全国ミニトマト選手権と、全国規模の選手権で通算4回の最高金賞(日本一)を獲得している。
単発のヒットではなく、毎年のように入賞し続けている希少な高糖度トマト農家だ。
🍅 澤藤園 受賞実績(全国青果物選手権)
日本最多の最高金賞(1位)4度受賞(澤藤園公式より)
【全国ミニトマト選手権】
- 第5回(2026年4月):「さわとまと柔」最高金賞(1位)+特別賞「感動の1粒」
- 第5回(2026年4月):「さわとまと極み」金賞(2位)+特別賞「ベストバランス」
- 第4回(2025年5月):「さわとまと極み」銀賞
- 第3回(2024年):「さわとまと極み」金賞(2位)
- 第2回(2023年4月):「さわとまと」最高金賞(1位)+「さわとまと極み」金賞(2位)
【全国トマト選手権 ミディアム部門】
- 第5回(2026年4月):「さわとまと甘美」入賞
- 第4回(2025年4月):「さわとまと甘美」最高金賞(1位)(2年連続)
- 第3回(2024年4月):「さわとまと甘美」最高金賞(1位)
【全国トマト選手権 ラージ部門】
- 第4回(2025年4月):「さわとまとラージ」入賞
主催:一般社団法人日本野菜ソムリエ協会(全国青果物選手権)
全国規模の選手権で通算4回の最高金賞(日本一)を獲得。第5回全国ミニトマト選手権では1社で4タイトル独占の快挙。
主催:一般社団法人日本野菜ソムリエ協会(全国青果物選手権)
先日、その「さわとまと」を実際に食べ、その美味しさと手軽さ、ペアリングとの相性の良さについてご紹介させていただいた。
シリーズとしてまとめているので、未読の方はぜひ気になる切り口からどうぞ。
この記事がきっかけで、生産者の澤井政善氏に取材させていただく機会があった。
消費者として気になることを聞いてみようと、栽培の裏側からトマトの選び方まで、かなり突っ込んだ話を伺っている。
私が最も気になっていたのは一点だった。
取材を通して見えてきたのは、「設計されたトマト」という言葉に集約される、再現性への徹底したこだわりだった。
今回の記事では、
- 高糖度トマトは本当に美味しいのか
- なぜ「甘いだけのトマト」が料理に向かないのか
- 当たり外れの少ないトマトの見極め方
この3点を、生産者への取材をもとに整理した。
- 🍅 澤藤園 受賞実績(全国青果物選手権)
- 研究と設計から始まった「勝てる農業」
- 数値で管理する農業──感覚に頼らない再現性
- 10通り以上を同時に試す実験型栽培
- 「美味しいトマト」とは何か
- 水を絞れば甘くなる、は本当か?
- 統合環境制御でつくる理想の成長環境
- ヤシガラ培地が生む品質と持続性
- 直売モデルが品質を高めた理由
- 糖度別ブランド戦略「松竹梅」
- 美味しく食べるためのポイント
- 「きつい農業」から「続けられる農業」へ
- 次なる挑戦と未来への取り組み
- 取材後記|「年間走行距離」という哲学
- まとめ:「毎回ちゃんと美味しい」という価値
研究と設計から始まった「勝てる農業」

澤井氏がトマト栽培を本格化する前、まず取り組んだのは学術論文や研究成果の徹底的な読み込みだった。
経験や勘に頼るのではなく、すでに明らかになっている研究成果や論文を参考にしながら、成功確率が高そうな条件を整理していったそうだ。
高糖度化に成功する可能性が高そうな条件をもとに、あらかじめ約20パターンの栽培設計を準備。
その結果、初年度から成果が出る条件に当たった。
これは偶然のヒットではなく、「成功確率の高い仮説を用意し、実際に試す」という研究型アプローチの成果だった。
この姿勢は、その後の栽培管理にも一貫しており、毎年の改善もすべて仮説と検証の積み重ねで行われている。
また、多くの農家が『量』を優先する中、他の農家との差別化として『糖度』を明確に指標としたそうだ。
実家がトマト農家であり、トマトそのものは家業の延長にある。
その中で「糖度」という明確な差別化軸を据えたのは、経営判断として極めて合理的だ。
品質を運に任せず、綿密な設計によって作る。
さわとまとの強さは、ここからすでに始まっていたのである。
数値で管理する農業──感覚に頼らない再現性
澤井氏は、栽培開始当初から明確なKPIを設定している。
初年度の指標は、
- ハウスごとの平均糖度
- 糖度帯ごとの果重平均
- 直販率60%
- 秀品率70%
- 給液EC・培地EC(非公開)
といった、品質と収益性の両方を意識したものだった。
その後さらに、
- 花房ごとの花数管理
- 病害虫防除の精度
- 給液による茎割れ防止
- 裂果率
- ハチによる傷果の割合
など、栽培の細部にまで踏み込んだ指標を追加していく。
ここまで数値化する理由は単純だ。
「うまくいった理由」「うまくいかなかった理由」を感覚で終わらせず、次に活かせる形で残すためである。
こうして積み重ねられたデータが、毎年の改善につながり、品質のブレを最小限に抑えている。
品質を「感覚」ではなく数値で制御する農業へ。
それが、さわとまとが毎年安定して評価され続ける理由のひとつだ。
10通り以上を同時に試す実験型栽培
「1年で10通り以上を試行錯誤する」という言葉の裏には、きちんとした試験設計がある。
例えば、
- 給液管理を4通り
- 品種を2通り
- 葉の残し方を2通り
これらを組み合わせることで、16パターンの条件を同時に検証していく。
ひとつずつ試すのではなく、複数条件を並行して比較することで、より早く最適解に近づける仕組みだ。
評価は糖度だけではない。
- 収穫量
- 食味
- 単価
- 売上
- 作業効率
といった指標を総合的に判断している。
いくら甘くても収穫量が極端に落ちたり、作業負担が大きすぎれば続かない。
澤井氏が見ているのは、「その年だけ美味しいトマト」ではなく、美味しさを毎年安定して届け続けられる品質だ。
甘さだけではなく、農業として成立するかどうかまで含めて設計されている点が、さわとまとの強さなのである。
🍷 再現性こそが最大の価値
余談だが、私自身も酒類バイヤー時代「これほど美味しいワインには出会ったことがない」と感動した一本があった。
ところが翌年、同じワインを購入したところ、あのときの感動は再現されなかった。
ワインに限らず、自然を相手にした一次産品では、年ごとの気候や環境によって品質が変動することは珍しくない。
だからこそ、毎年安定して高く評価され続けること自体が、実は非常に難しい。
そう考えると、さわとまとが再現性を重視し、数値と検証で品質を積み上げてきた意味が、よりはっきりと見えてくる。
「美味しいトマト」とは何か

澤井氏の定義は非常にシンプルでありながら、本質を突いている。
さわとまとが目指しているのは、「トマト嫌いな人が、美味しいと言っておかわりをせがむトマト」だ。
そこにあるのは、単なる糖度競争ではない。
ただ甘いだけのトマトではなく、
- 適度な酸味
- 濃厚な旨味
- みずみずしさ
- デラウェアのような華やかな香り
これらがバランスよく重なり合うことで、初めて「美味しい」と感じられるトマトになる。
実際、高糖度トマトの中には甘さが前に出過ぎてしまい、料理に使うと味の輪郭を壊してしまうものも少なくない。
一方さわとまとは、甘みがありながらも酸味と旨味がしっかりと土台を支えているため、そのまま食べても美味しく、加熱しても味が崩れない「使えるトマト」として評価されている。
糖度は分かりやすい指標だが、「糖度が高い=必ず美味しい」ではない。
甘みが強くても酸味や旨味が弱ければ単調になり、料理ではむしろ扱いづらいこともある。
さわとまとが評価されているのは、糖度をゴールに置くのではなく、味のバランスや使い勝手まで含めて品質を設計している点にある。
この定義と、実際に食べたときの印象は一致していた。
実は先日訪れた、高級鉄板料理店「あざみ野うかい亭」のコース料理にも、パスタの食材としてさわとまとが使われていた。加熱しても味の構造が崩れないからこそ、一流の料理人にも選ばれるトマトなのだろう。
水を絞れば甘くなる、は本当か?
一般的に「水分を制限すれば糖度は上がる」と言われる。
しかし澤井氏は、そこに明確な分岐点が存在すると語る。
水を絞ることでトマトはストレスを受け、糖分を蓄えやすくなる一方で、絞りすぎると光合成に必要な水分さえ得られなくなり、逆に糖度が下がる現象が起きるという。
この見極めには企業秘密の手法もあるが、一度この「糖度の逆転現象」を経験すると、数値や樹の状態からおおよそのポイントが分かるようになるそうだ。
ただ限界まで水を制限するのではなく、トマトが最も美味しさを発揮する「最適なストレス状態」を探り続ける調整こそが、品質を決めている。
📘 ちょこっと豆知識:糖度の逆転現象
植物は光合成によって糖を作る。光合成には水と二酸化炭素、そして光が必要だ。
水分を制限するとトマトはストレスで糖を蓄積するが、制限しすぎると光合成そのものが滞り、糖を作る能力が落ちてしまう。
その境界線を見極められるかどうかが、フルーツトマト栽培の核心と言える。
統合環境制御でつくる理想の成長環境

温度・湿度・CO2・日射量を総合的に管理する統合環境制御。
さわとまとでは、これらの要素を単独で見るのではなく、トマトの生育状態に合わせて組み合わせて調整することで、常に最適な環境を維持している。

中でも特に重視しているのが温度管理だ。
温度を適切にコントロールすることで、
- 結露を防ぎ病気の発生を抑える
- 実の裂果を防止する
- 光合成を効率よく促進する
- 糖度を狙った方向へ調整する
といった効果が同時に得られるという。
季節ごとに、
- 冬は暖房機で保温
- 春以降はミストや遮光カーテンで温度上昇を抑制
と対策を切り替えながら、日射量に比例して給液量も細かく調整。
自然任せではなく、環境を設計することで品質を安定させている点が、再現性の高さにつながっている。
天候に左右されやすい露地栽培とは異なり、こうした環境制御型農業は、日本の気候変動が進む中でも安定した品質を届けるための一つの答えとも言える。
ヤシガラ培地が生む品質と持続性

さわとまとの栽培は、最新のICT技術を用いた統合環境制御型ハウスで行われている。
温度・湿度・日射量などを細かく制御することで、トマトの生育環境を常に最適な状態に保っている。
土の代わりに使用されているのが、ココナッツ由来のヤシガラ培地だ。
この培地は水分や養分のコントロールがしやすく、糖度や生育スピードを細かく調整できるという特徴がある。
土耕栽培に比べ、病害虫のリスクも抑えやすく、品質のばらつきを減らすことにもつながっている。
統合環境制御とヤシガラ培地を組み合わせることで、自然条件に左右されやすいトマト栽培においても、高品質を安定して再現できる仕組みが構築されているのだ。
直売モデルが品質を高めた理由

澤井氏によれば、直売比率を高めたことで出荷作業の時間が減り、その分を栽培管理に充てられるようになったという。
さらに自販機導入により、店頭対応の時間すら削減。
ライブカメラで在庫状況を可視化しつつ、お客様のプライバシーにも配慮。
効率化が品質向上へ直結している。
こうした仕組みによって、生産者が品質管理に専念できる体制が整い、飲食店にとっても「毎回味がブレにくい安定供給」が実現している。
また、ネットショップも今後はさらに展開予定とのことだが、トマトは3日で糖度が変化してしまうという特性があるため、現在は確実に美味しい状態で届けられる量を見極めて販売するスタイルを貫いているそうだ。
品質を保てる範囲で出荷量をコントロールする姿勢が、結果として「いつ買っても外れない」という信頼につながっている。

糖度別ブランド戦略「松竹梅」

さわとまとには様々なラインナップがあるが、品種ごとに価格や特徴が異なり、それはいわば松竹梅構成となっている。
トマトは季節や栽培条件によって味や品質が大きく変化する作物だ。
多くの場合、こうした変動は無視され、同じ商品名・同じ価格で販売され続けることも少なくない。
しかし澤井氏は、その時々のトマトが持つ価値を正しく伝えることを重視し、糖度をはじめとした指標によって品質を評価し、価格に反映させている。
栽培段階から糖度帯ごとの果重平均をKPIに置いていることで、「今日はどのレベルの美味しさなのか」が消費者にも分かる仕組みができているのだ。
これは単に高いトマトを売るためではなく、自然条件によるブレを隠さず、その時のベストな状態を正直に届けるという姿勢の表れでもある。
美味しく食べるためのポイント
一番味が乗る時期
さわとまとが最も美味しくなるのは、寒暖差がほどよく、糖度がのる4月〜5月上旬頃。
気温と日射量のバランスが良く、糖度と旨味の両方が安定して高まる時期だという。
ちなみに糖度だけ高いような品種もあるそうだが、さわとまとは特に水分量を絞った作り方のため、出汁のような旨味も感じるとのこと。
良いトマトを見極めるコツ
澤井氏に、良いトマトを見極めるポイントを伺った。
プロとして日々品質と向き合っているからこそ重視している視点だという。
ぜひ、買い物の際の参考にしてほしい。
買う前チェック(30秒)
① 表示:糖度や等級など、その日の品質を変動込みで説明しているか
季節によって味が大きく変わるトマトを、常に同じ商品名・同じ価格で売っていないか。
その時々の状態を正直に伝えようとしているかは、信頼性を測る大きな指標になる。
② 証拠:受賞歴・納入実績・口コミなど第三者評価があるか
第三者から評価され続けているかどうかは、品質の再現性を見るうえで重要な材料になる。
③ 透明性:栽培や出荷の考え方を継続的に発信しているか
都合の良いタイミングだけでなく、日々の取り組みや工夫を継続して発信している生産者ほど、品質管理に責任を持っているケースが多い。
この3点を押さえると、「糖度が高いか」だけで選ぶのではなく、
- 当たり外れが少ないか(再現性)
- 説明に誠実さがあるか(変動込みで伝えているか)
という視点で選べるようになり、結果として「高いのに外した……。」が起きにくくなる。
ちなみにさわとまとは、糖度の表示はもちろんのこと、うかい亭など著名レストランや、その他多摩地域のレストランで多数の採用実績があり、ホームページでもどのような取り組みをしているか、事細かに発信されている。
近頃はスーパーでも糖度が記載されている野菜もあるので、ぜひ参考にしていただきたい。
保存と温度のポイント
トマトは冷やしすぎると低温障害を起こし、風味が落ちてしまう。
冷蔵庫で保存する場合は野菜室が適切。
また、ヘタを取ることで雑菌の繁殖を抑えやすくなる。
食べる直前に常温へ戻すことで、甘みや香りをより強く感じやすくなる。
糖度で使い分ける食べ方
意外だが、高糖度トマトほど料理には使いづらい場合もあるという。
糖度12度未満の場合は加熱調理がおすすめ。
加熱によって甘みが増し、香りが立ち、さらにリコピンの吸収率も高まる。
一方で、糖度12度以上のトマトは生食がベスト。
甘さが非常に強いため、料理に使うと味のバランスを崩してしまうこともあり、実際に多くのシェフからも「そのまま食べた方が一番良い」と言われているそうだ。
用途に合わせて家庭でも使い分けるのが良いだろう。
「きつい農業」から「続けられる農業」へ

これまでの日本の農業には、「きつい」「汚い」「危険」というイメージが根強くあった。実際、重労働や長時間作業が当たり前の現場も少なくない。
しかし、さわとまとの栽培現場を見ていると、そのイメージは大きく変わる。
澤井氏が整えてきたのは、気合や根性に頼る農業ではなく、仕組みで品質と作業を支える農業だ。
トマトは地面ではなく高い位置に設置された培地で育てられており、腰を大きくかがめる作業はほとんどない。
無理な姿勢で長時間作業を続ける必要がなく、身体への負担が抑えられている。
また、清潔で安全な環境が保たれているため、危険な機械に囲まれて作業することもない。
澤井氏が重視しているのは、「その年だけ良い作物を作ること」ではない。
人が無理なく続けられ、何年先も品質を保ち続けられる農業である。
品質を追求することと、働きやすさを犠牲にしないこと。
その両立こそが、さわとまとの安定した評価を支えている。
次なる挑戦と未来への取り組み
現在、澤井氏はラージトマト部門への再挑戦にも力を入れている。
これまで培ってきた強みは、単なる高糖度ではなく、甘さ・酸味・旨味のバランスを設計できること。
前回の挑戦では万全な状態で臨めなかった悔しさもあり、次回に向けては栽培条件の見直しや新たな工夫を重ねながら、「本来の力を発揮できる環境づくり」が進められているという。
また近年の猛暑による収穫量減少も大きな課題だ。
暑さは糖度の天敵で、夜間の温度が高いと呼吸が多く、糖度が使われてしまうのだという。
夏の間だけでなく、近年は9月以降も30度以上の日が続くなど、気候変動が避けられない中で、環境制御技術をさらに進化させながら、安定生産をどう守っていくかにも挑戦し続けている。
そして澤井氏が力を入れていきたいと語るのが、農業に興味を持つ学生の受け入れや連携活動だ。
実際、澤藤園では「とうきょう援農ボランティア」「早稲田大学農学塾」などの団体が継続的に関わっており、学生団体が主催するイベントの講師活動やマルシェの出店などを行いながら、学びの場を作る取り組みを続けている。
無理に大きな旗を振るのではなく、できる範囲で意欲ある若者を支えていく。担い手不足が叫ばれる日本農業の中で、こうした地道な取り組みこそが、結果として未来を支える足場になっていくのだろう。

取材後記|「年間走行距離」という哲学
取材から少し時間を置いた頃、澤井氏が自身のSNSで第5回全国ミニトマト選手権の受賞について綴っていた。
その投稿には、印象的な一節があった。
『高品質のトマトをいかに長期間生産するか』を常に意識したいです。」
澤井氏は、最高金賞を受賞した4月24日について、こう振り返っていた。「この日の1週間前なら、柔より極みの方が評価が高かったし、1ヶ月後なら東京では味のピークは過ぎている」と。
受賞当日の評価はあくまで「ある日の時速」に過ぎず、それ以上に重要なのは年間を通じた走行距離=継続的な高品質である。これは、取材中に伺った「一時的な結果より、長く高品質を続けることが重要」という言葉と完全に重なる。
さらに澤井氏は、こう続けていた。
4タイトル独占という前代未聞の快挙の直後にこの姿勢。「設計されたトマト」を支えているのは、技術や仕組みだけではなく、こうした生産者自身の徹底した自己客観視だったのだと、改めて思い知らされた。
📌 取材で見えた裏事情
実は今回の第5回選手権、澤藤園にとって順風満帆な状況ではなかった。3月上旬に一緒に働く身内が怪我をし、管理作業に制約が生じる中、ミディアム部門の3連覇(第3回・第4回連続最高金賞のミディアム部門での3度目挑戦)を諦めるという苦渋の戦略判断を経て、ミニトマト部門にリソースを集中させたのだという。
困難な状況でも、限られたリソースで最大成果を出すための取捨選択ができること。それもまた、設計型農業の本質なのかもしれない。
まとめ:「毎回ちゃんと美味しい」という価値
取材の中で、印象的だった澤井氏の言葉がある。
この考え方が、そのまま味に出ている。
甘いだけじゃない、ちゃんと料理にも使える、日常に寄り添うトマト。
毎年選ばれ続ける理由が、少し見えた気がした。
糖度は便利な指標だが、それだけでは「美味しさ」も「使い勝手」も測れない。
表示・第三者評価・透明性・用途相性──この4つを持っておくと、トマト選びの精度は確実に上がる。
糖度は入口、味は事実。
消費者にとって一番大事なのは、最後の「事実」の部分だろう。
甘さの先にある背景を知ることで、これからトマトを選ぶ目も、食べる楽しさも、きっと変わってくるはずだ。
■ この記事を読んだ後の判断基準
- 糖度だけで選ばない
- 用途(生食 or 加熱)で選ぶ
- 表示・評価・透明性を見る
この3つを意識するだけで、「高いのにハズレ」はかなり減る。
※本記事は、生産者・澤井政善氏への取材をもとに構成しています。
▼澤藤園の様子を動画でご覧いただけます
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この記事を書いた人:らむこ
おいしいものと人の温かさを探して、あちこち食べ歩いています。ブログやSNSでは、料理の味だけでなく、空間や人柄、ちょっとした気づきまで伝わるようなレポートを心がけています。
日々の食がちょっと楽しみになるような、そんなヒントをお届けできたらうれしいです。