
都会の喧騒を離れ、ただ時間がゆっくりと流れる場所へ――。
そんな想いを抱き、辿り着いたのは山口県の美しい島、周防大島。穏やかな海と豊かな緑が織りなすこの島で、私は一つの特別な場所と、そこで新たな人生を謳歌するご夫婦に出会った。そのお店の名は、「パララン」。
- 周防大島に抱かれた、癒しの空間「パララン」
- 吉祥寺「オクワ酒屋」から周防大島へ。二人が選んだ「スローライフ」という道
- 豊かな恵みを味わう、心と体が喜ぶ料理たち
- 「パララン」に込められた想いと、二人の未来
- 周防大島と「パララン」が教えてくれたこと
- パラランの店舗情報
周防大島に抱かれた、癒しの空間「パララン」

岩国空港からレンタカーを走らせ、大島大橋を渡って約30分。海沿いの道を抜け、緑深い中にひっそりと佇むのが「パララン」だ。
お店に着くまでには手作りの案内板が点々と。どこか懐かしい温かさを感じさせてくれる。

お店に到着すると、温かく迎えてくださった懐かしの顔ぶれ……。後述するが、実はここの店主のご夫婦とは、顔なじみなのだ。
まずは荷物を置かせていただくことに。
民家をご夫婦が自らリフォームされたそうで、一歩足を踏み入れると、柔らかな日差しが差し込む開放的な空間が広がっている。
なんとこちらは元々ガレージだったそうだ。
とてもそんな風には見えないようなおしゃれさである……。

ふかふかのソファに身を預ければ、耳に届くのは鳥たちのさえずり。

Bluetoothも使えるという深緑色のラジオにはカセットが刺さっており、早速再生すると、心地よい音楽が流れてきた。まるで誰かの家に遊びに来たような、不思議なほどリラックスできる雰囲気だ。
また、棚には村上春樹の小説や図鑑などが並び、多趣味な人柄が伺える。
特に印象的だったのは、2階に広がる広々としたすのこベッドの部屋。

シンプルながらもおしゃれで、どこか懐かしさを感じる空間。ゴロンと横になると、窓から心地よい風と共に鳥の声が運ばれてきた。
さて、到着してすぐに出してくださったのは、庭で採れたレモングラスから煎れたという、自家製のアイスハーブティー。

爽やかなレモングラスの香りと味わいに、ふうっと一息つく。
お庭を見せていただくと、そこにはのびのびと育つレモングラスの姿が。
お茶にも料理にも蚊よけにもなるレモングラス……。こんなに立派な姿を見ると、思わず育てたくなってしまう。

吉祥寺「オクワ酒屋」から周防大島へ。二人が選んだ「スローライフ」という道
さて、実はこのパラランのご夫婦、数年前まで東京・吉祥寺で「オクワ酒屋」という人気の居酒屋を営んでいらっしゃった方々。駅から徒歩5分ほどの場所にあった、半地下の隠れ家的なお店。

いつも賑わっていて、うるさすぎない居心地の良さと、どれも絶品の料理で私たち家族も大のお気に入りだった。

特に、スパイス使いが光る料理や、フルーツを使った独創的なおつまみは、家族全員の大・大・大好物。
2011年にオープンし、ご夫婦が30代前半の頃から始められたお店は、2023年12月、周防大島への移住の準備をされるとのことで、惜しまれつつ閉店。

家族4人で本当に良く通っていた「オクワ酒屋」。
30代の妹も、当時は未成年……。(笑)
だからこそ、今回私と夫がパラランを訪れた時、快く迎えてくださったのが何よりも嬉しかった。
都会での多忙な日々、お店を切り盛りする中で、きっと様々な想いを抱えていらっしゃったのだろうと推察。
そのような暮らしから、周防大島という新たな地で、2024年8月から理想とするスローライフを始められた二人。現在はランチ営業をメインに、ご夫婦の旧知の仲の方には民宿としても開放されている。
豊かな恵みを味わう、心と体が喜ぶ料理たち
パラランの魅力は、何と言っても地元の恵みをふんだんに使った、心温まる料理の数々。お昼は本格的なタイ料理を提供されている。
黒板には人気のカオマンガイなどのテイクアウトメニューが。

夜は知り合い向けの民宿として、その日採れたばかりの山菜や、畑で育った野菜、さらには物々交換で手に入れた食材で作られるという、まさに「その日、その時」だけの特別メニュー。
今回、私もディナーをいただくことができた。一つ一つの料理に込められたご夫婦のこだわりと、島での暮らしが垣間見えるようで、感動の連続だった。
記憶に残るディナーメニューの数々

まずは少量他皿スタイルで始まった今回のディナー。心遣いがなんとも有難く、美味しいものをちょっとずつつまめるのは嬉しい限りである。
➀そらまめ入りおからサラダ
庭で採れたソラマメを使ったサラダ。おからサラダは居酒屋時代から人気だったそう。優しい味わいにホッとする。
②大島産ひじきとゴーダチーズのサラダ
周防大島名産のひじきに、ゴーダチーズのコクと玉ねぎのさっぱり感が絶妙にマッチ!ひじきの新たな美味しさに目覚めてしまった。
③なつみ(みかん)のディルマリネ:
フルーツのおつまみ好きと覚えていて下さり、出してくださった一品。この地域のみかん「なつみ」の甘さと、相変わらずお見事なハーブ使いに感動。
④いんげんのトマト煮
庭で育ったインゲンと、イタリアの品種のトマトを使った一皿。実はトマトがちょっとだけ苦手な夫も「美味しい!」と絶賛するほど、素材の味がしっかりと感じられた。
⑤揚げ茄子のバルサミコマリネ:
庭で採れたナスを揚げ、酸味の効いたマリネ液がしっかり染み込んだ逸品。食感と味のバランスが最高だった。
⑥蕨のお浸し: 山で採れた新鮮なワラビのお浸し。居酒屋時代はかつお出汁でしたが、周防大島名産のいりこ出汁に変わったそう。
いりこの旨味が奥深く、思わず唸る美味さ。
いりこ出汁って、こんなに美味いんだぁ……。
次はオクワ酒屋で一日2回も頼んだほど大好物だったというアンチョビキャベツを思い出させる、キャベツとピーマンのグリルのバーニャカウダ。

当時からキャベツの丸ごと感が好きだった私。この葉を一気に持ち上げて、がっつりソースと絡めて食べるとそこはもう口福の世界。
ピーマンも相性抜群。こんなにたくさん野菜が楽しめるのも幸せである。
お次はたことマンゴーのセビーチェ。

沖縄・宮古島のお土産でいただいたという「ピンポン」と呼ばれる小粒のマンゴーのキュッとした食感と甘み、周防大島近辺で獲れたであろうタコの旨味、そしてパクチーの爽やかさが織りなすハーモニーは絶品……!!!
思い出したらまた食べたくなってきた。。。
そしてこちらも夏の醍醐味、ヤングコーンの登場だ。
このヤングコーンの春巻きには、トウモロコシの髭も入っている。

トウモロコシの髭大好き人間の私は、このヤングコーンの春巻きをおかわりしたくてたまらなかった。
ちょこんと包まれたこのフォルムの可愛らしさ、甘味もあり、絶妙な食感も素晴らしく、アジア料理好きの心を掴むスイートチリソース。
夫の分もぶんどりたくなるほど美味しかった。
そしてまたもや好物がやってきた。エイヒレのから揚げだ……!
しかし、よく見ると、何やらちょっとゴツイ見た目。

想像するエイヒレとは違い、柔らかい骨も入った噛み応えのあるから揚げ。レモンを絞ると旨味がさらに引き立っていて、個人的には真ん中どストライク!!!!!
エイヒレは、家でもオーブンで焼き、七味とマヨネーズをかけてつまむのだ定番なのだが、から揚げで食べることがこんなに美味しいだなんて、初めて知ってしまった。。。
そうして次にやってきたのは生ハムと桃とクリームチーズのマリネ。周防大島で採れる桃を使った、昔を思い出すフルーツのおつまみ。生ハムの塩気と桃の甘さ、クリームチーズのコクが相変わらず絶妙。

瀬戸内海周辺というと、柑橘が採れるイメージなのだが、この桃も非常に美味しくいただいた。
まだまだ素敵な時間は終わらない。
ここで豚肉のナムトックがやってきた。ボリューム満点のタイ料理。香辛料が効いていながら甘みもあり、パクチー好きにとってはたまらない一品。

夫と二人で夜食として部屋で楽しむほどのお気に入りに。
そして、満を持して登場したのが猪ミートソースとズッキーニのグラタン。
その名の通り猪肉が使われているのだが、実は近くの道の駅(サザンセト とうわ)でも猪肉コーナーが設けられるほど、身近なようだ。

赤ワインとの相性も抜群で、ナスではなくズッキーニを使っているのがまたニクいところ。チーズと猪のボリューム感をきゅっと引き締めてくれて、ナスより食感もあるのが本当に良い。。。
そうしてとうとうラストのメニューに。
私たちのお腹のふくらみ具合を気遣って良い塩梅の量で作ってくださった小イワシのほぐし身とトウモロコシのパスタ。

にも関わらず、その美味しさには驚愕!イワシの旨味とトウモロコシの甘みがこんなにもパスタに合うなんて、こちらも新たな発見と言わざるを得ない。
野菜を中心に、色々な料理で楽しませてもらえて、幸せとしか言いようがない。
そして忘れてはならないのが、このお料理に合わせていたお酒の話である。

ナチュラルワインやクラフトビールの品揃えが素晴らしく、どれを頼もうかいい意味で悩んでしまった。
小売酒販免許を取得されたとのことで、小売価格で飲めるというのも非常に嬉しいポイント。
撮影するのを失念してしまったが、今回はワインをボトルで2本とクラフトビールを1本頼ませていただいた。
(※ワインは小売価格での提供でグラスサイズでの提供はないので、その点のみ注意)

因みに、ワインの横には店主さんが集められているというおしゃれな石や水晶たちが飾られていた。
これだけあると、圧巻である。

そして、夜のお品書きの文字、そしてお店へ向かう道中の案内板の文字……、昔オクワ酒屋で見ていたメニューの文字と全く同じで、思わず「懐かしい~!」と声を上げてしまった。

この文字を見た昔からの常連さんたちは、皆同じことを言うそうだ。(笑)
こういった瞬間に、ご夫婦との温かい繋がりを感じる。
昔のお客さんが、当時のメニューを模した箸置き(有名な方に作ってもらったらしい?)をプレゼントしてくれたというエピソードも、お二人がいかに愛されているかを物語っている。

心温まる朝食と、育む暮らし

翌朝の朝食も、パラランならではの心遣いが詰まっていた。
ご主人が酵母から手作りするという、ふっくらと焼き上がった丸パン!
実際に酵母を見せてくれたのも面白く、そのこだわりと愛情を感じた。自家製キウイジャムと八朔ジャムを添えていただいたが、どちらも素材の味が濃縮されていて、素晴らしい美味しさ。

庭で採れたトマトで作られた自家製ケチャップや、そして庭の畑で育ったジャンボサイズのキュウリ、赤玉ねぎを使ったサラダとドレッシングも、素材の味が活きていて感動しました。優しい味わいのジャガイモのスープも、じんわりと体に染み渡るようでした。

「パララン」に込められた想いと、二人の未来

「パララン」という店名の由来も、面白い。
お店にあった大きなオーディオセットの上には、昔のレコード「パラダイスアンドランチ」のジャケットが。
ご主人の趣味だったそのレコードから、「しばらくランチだけやろう」という思いも込めて、「パララン」と名付けたとのこと。なんともユニークで、お二人らしいエピソードだ。
周防大島に移住してからのご夫婦は、本当にのびのびと、そして積極的に島の人たちと交流されているようだ。
物々交換で食材を手に入れたり、助け合ったりと、都会ではなかなか見られないような人との繋がりを自然に築いていらっしゃる様子は、本当に素敵だった。
朝は早く起き、庭の草刈りも「充電が切れたら今日はおしまい!」と、無理なく自分たちのペースで生活されている姿は、私にとって憧れの「スローライフ」そのものだった。
今回お二人を見て、夫婦で理想の暮らしを追求する姿に心から尊敬を覚えた。

庭には夏野菜やみかんが実り、シャインマスカットや巨峰、今後はワイン品種のシャルドネとシラーまで育てる計画があるとのこと。
もちろん楽しいことばかりではないかもしれないけれど、自分たちの手で暮らしを作り上げていく喜びが、ひしひしと伝わってきた。
「今もまだ頑張ってる最中だから、もっと進化する!」と優しく目を輝かせながら語るお二人の言葉に、私も「また来たい!」と心から思わせていただいた。
周防大島と「パララン」が教えてくれたこと
今回の周防大島での滞在、そして「パララン」での出会いは、私にとって単なる旅の思い出以上のものとなった。
都会の生活に疲弊し、新たな生き方を求めて島へ移住したご夫婦の姿は、まさに「スローライフ」の理想を体現していたように思う。

自給自足に近い暮らし、地域との温かい繋がり、そして何よりも自分たちのペースで人生を楽しみ、創造していく姿勢は、私自身の生き方を見つめ直すきっかけにもなった。

夫と「いつか自分たちの理想の家を建てて、植物を育てながら自給自足ができたらいいね」と話している私たちにとって、「パララン」のご夫婦は、まさにその「理想」を叶えている存在。
楽しいことばかりではないかもしれないけれど、自分たちの手で暮らしを作り上げていく喜びが伝わってきた。
パラランの店舗情報

パラランの店舗情報は下記の通り。本当に優しくて素敵なご夫婦が営まれているので、ぜひ皆さんにも行っていただきたい。
また、パラランのInstagramでは周防大島での暮らしの様子を覗くことが出来て非常に面白いので、こちらもオススメである。酵母の様子や畑の様子、島の生物やキノコの胞子がブシュブシュ出てくる様子など、楽しい動画や写真が沢山だ。
- ・住所:
- 〒742-2924 山口県大島郡周防大島町外入1808−11
- ・アクセス:
- 岩国空港からレンタカーで大島大橋経由で約30分
- ・営業時間:
- ランチ営業のみ
- 定休日:火・金曜日
- 月・水・木・土曜日:11:00-15:00
- ・その他:
- 現在は知人向けの民宿も運営されている。
- ・Instagram:
- @_paralun_
- ・元のお店(ご参考):
- 吉祥寺「オクワ酒屋」〒180-0003 東京都武蔵野市吉祥寺南町2丁目6−1(2023年12月閉店)
※営業日や営業時間、民宿利用については、事前にInstagramなどで最新情報をご確認いただくか、直接お問い合わせいただくことをお勧めします。
周防大島には、「パララン」以外にも魅力的な場所がたくさんある。
次回は、周防大島全体の魅力を深掘りする旅ブログをお届けしたいと思いますので、ぜひお楽しみに!
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この記事を書いた人:らむこ
おいしいものと人の温かさを探して、あちこち食べ歩いています。
レビュー歴10年以上、Googleレビューでは全国上位5%のレビュアーとして活動中。ブログやSNSでは、料理の味だけでなく、空間や人柄、ちょっとした気づきまで伝わるようなレポートを心がけています。
日々の食がちょっと楽しみになるような、そんなヒントをお届けできたらうれしいです。