「酒が好き」
一口にそう言っても、その理由は実に様々であろう。
美味しいから?酔うのが気持ちいいから?酒の場の空気が好きだから?作り手による味の違いが面白いから?
……嫌なことを忘れられるから?
なぜわざわざそんなことを考えようと思ったのかは自分自身よく分からないが、私は考えるという行為が結構好きだ。そして、なぜ私が酒を好きなのか深く考えたことがなかったからこそ、この機会に少し考えてみる。
今回は自問自答つまりjii行為にあたることをしかねない。アブナイ回だ。
もともと食の世界が好きな自分
まず、食の世界というのは体験型レジャーの一種だと私は思っている。
少なくとも私にとっては、食べ物を食べて、飲み物を飲んだら、それらはお腹の中で消化され、栄養が蓄えられ、いらないものは排出され、エネルギーが消費されたら、おしまい……ではないのだ。
世界中のものを体験できる時代
私はろくに英語も喋ることが出来ない非グローバル人間だが、今の時代は世界各国のものを食べることができるし、飲むことが出来る。
日本の食も非常に素晴らしい。私は日本酒も大好きだし、和食も大大大好きだ。しかしひとたび世界へ目を向けると、当たり前ながら、土壌も気候も異なり、育てる作物も醸造の技術も調理の方法も異なっている。
だからこそ、どこかの国の食の世界に惚れ込んでしまうことだってあるだろう。今は実際にそこへ行って修行することだって出来てしまう。
全く、なんて可能性に満ち溢れた時代なのだろう。本当、とても恵まれている。
食=体験型レジャー
そんな恵まれた時代だから、実に様々な味の食べ物や飲み物を楽しむことが出来るのは間違いないのだが、もちろん人によっては「食べたら終わりでしょ?」という考えをすることもあると思う。エネルギーになればいい。飲むことができて・食べることができれば・なんでもいいと。
もちろんそれは間違いではない。人によって何を楽しむかは自由だ。
ただ、どこかで勿体ないという自分がいるのも事実だ。
前述したとおり、私は食を体験型レジャーだと考えている。自分の身体に入ってしまえば、それは確かになくなってしまう。しかしながら、もしその時食べたものとその時飲んだものがとっても美味しかったら。その味が、香りが、見た目が、食感が、温度が、調理方法が、組み合わせが良かったら。
それは美味しいということだけでなく、楽しい。面白い。もっと知りたい。そんな気持ちになると思うのだ。
実際食は五感をかなり刺激していると思う。
例えば私が今日食べた鉄板焼きのステーキなら、コテと鉄板がかんからかんと重なり、スライスしたニンニクはこんがりきつね色になっていく。
大ぶりな肉を置くとじゅわーっと脂の音がして、スパイシーなコショウ臭。
シェフが手際よく肉をサイコロ状に切っていくと、今度はソースを温め始めた。するとネギと醤油の香ばしいかおりがぶわっと漂う。
ここらへんで猫の目が丸くなったときのような気持ちになる。
ミディアムに焼かれた肉は中がほんのり赤く、ソースをかけたところで辛抱たまらんと大口を開けて食べる。ぱりっぱりのニンニクも食べる。
そして赤ワイン。濃密な味わいが、肉の脂をうまく溶け込ませている。
はうーー、、、至福!!!
……となるわけである。
普段クール風味で通っている私も(聞いてないってね)、この時ばかりは感動屋になる。
ここでさらに、この料理とこのワインはこういう背景で作られていてね、なんていうウンチクを知った日には、へえーそうなんだ!!!
となるわけである。
さすがに毎回の食事でそんなしょっちゅう感動してます~すごいっしょ?なんて言うつもりはない。しかし、食欲は人間の三大欲求であることから、飲み食いしない人間というのはいないのだ。つまり、誰でも感動を覚える可能性があるのだ。
そんな365日ウン十年の食事の中で、たまに「世界中にある食べ物×世界中にある飲み物=?」という無限のような組み合わせの中からそれを選び、口に入れて、それを楽しみ、感動することがあってもいいんじゃないのと、そう思うわけである。
なんだか大げさに言っているような気もするが、その行為にロマンを感じないだろうか。それが美味しかったときの感動、作り手の苦労話、その背景を聞いたときの更なる興味。だから食べることが好きで、飲むことが好きだ。
私はお酒が好きなのだ
食の話が長くなったところで、じゃあノンアルコールでもいいんじゃ?という人もいるかもしれない。が、私はお酒が好きなのだ。
実際私はお茶も好きだし、水もジュースももちろん飲む。だけど、食べるものと合わせるとなると、やっぱりお酒が合うのよ。お茶は脂を消すけれど、お酒は脂も美味しく感じさせるのよ。
ワインって、果実の香りだけじゃなくて、お花の香りもするんだよ。かと思えば煙草の匂いも、猫のおしっこみたいな香りもするんだよ。これが面白くないわけがないでしょうに。
私の好奇心をばしばしと刺激するから、お酒はやっぱり大好きと言わざるを得ないんだよなあ。
ただ、おかげさまでエンゲル係数高いんですよ。
プチプライスの化粧品を未だに愛用し、ディズニーランドにも行かず、飲み食いに費やす。そんな人生を歩んでいる者もいるのである。